実は2015年の後半から2016年にかけて、ハンバーガー市場はちょっとしたブームに湧いていた。「カールス・ジュニア」や「シェイクシャック」といった外資系のハンバーガー店が続々上陸。また「炭火焼肉なかはら」系列の「ヘンリーズバーガー」は黒毛和牛のパティを前面に押し出し、フランスの有名食肉店「ユーゴ・デノワイエ」もやってきた。国内のグルメバーガー勢も両国「シェイクツリー」や六本木「ゴリゴリバーガー タップルーム」などがバンズなしの”肉バーガー”で応戦し、多様性が一気に進んだ年だった。
そして今年2017年、ハンバーガーにも物語が求められるようになった。「UMAMIバーガー」はその物語を文字通り「うま味」に見出した。「モスバーガー」は季節限定だった「菜摘」シリーズ(バンズ代わりにレタスでパティをはさむタイプのハンバーガー)を通年アイテムに昇格させた。ヘルシー&フレッシュ文脈は、バンズの発酵&焼成や、パティをブロック肉→ミンチ→成形まで店内で行う「ザ・サードバーガー」も採用している。かと思えば、「フレッシュネスバーガー」は一部店舗で「フレッシュネスバー」や「バーガー&ビアー」といったアルコールとのペアリング提案も行なっている。
ハンバーガーのようにブームになりうる大衆食は、着想、模倣、飽和という展開を繰り返す。誰かが形にしたものが模倣されることで広く認知を得る。そこに商機を見出したプレイヤーが続々参入し、市場はいったん飽和状態になる。だがそこで消費され尽くすことなく多様性を獲得できた「食」は、厚みを増して文化へと発展していく。もしかするとわれわれは日本にハンバーガー文化が根づく瞬間に居合わせているのかもしれない。