■日本は成金に厳しく、ボンボンにやさしい国
──芸能人の結婚と離婚に関するケーススタディはたいへんわかりやすかったです。ダルビッシュ有選手と離婚したタレントの紗栄子さんは、「随分控えめな女性」という印象になるんですね。
藤沢:断っておくと、僕自身は芸能人のゴシップに興味はありません。国家権力が介入する結婚と離婚という制度の実態を知らせるために、事細かに報道される有名人の離婚劇をケーススタディとして本では紹介させていただきました。
まず芸能人の離婚報道でよく使われる「慰謝料」という言葉は、法律用語の慰謝料ではなく、離婚を成立させるための解決金の総額のことです。そして紗栄子さんの場合、最終的に「慰謝料5億円、月々の養育費500万円」で協議離婚を成立させたと報道されました(2012年1月17日発売の週刊女性、日刊ゲンダイなど)。報道が正しいかは僕にはわかりませんが、仮にこの報道が正しいとするならば、紗栄子さんは良心的だったと思います。本に詳しく書きましたが、当時のダルビッシュ選手の推定年俸からすると、もっと取ることはできたからです。
──神田うの夫妻が“もしも”離婚することになった場合、コンピの支払い義務は妻・うのさんに生じる可能性もある、と書かれています。
藤沢:これもまた知らない人が多いのですが、「財産分与」の対象になるのは、結婚“後”に得たお金だけ。つまり結婚前に持っていた財産は全く関係ないんですね。親の財産はなおさら関係ない。うのさんの夫は大手パチンコ・チェーンの経営者で、資産家であることは間違いありません。しかし、結婚してから資産を増やしたかといえば、パチンコは斜陽産業ですから、疑問符が付く。むしろ、事業家としても成功しているうのさんのほうが結婚後に稼いでいれば、財産分与を支払わなければならないのはうのさんになるのです。コンピはフローにかかってくるから、こちらも場合によっては、うのさんが払う立場になるかと。
日本は結婚制度でも税金でも、自分で稼いでいる成金には厳しい。一方、親から引き継いだりしてストックで金を持っている人にはやさしいんですよ。