■「貧乏な男と恋愛するな」というバカなことは申しません
──では、いざという事態を考えたら、ストックではなく、フローでお金を稼いでいる人と結婚したほうがよりよい、ということになりますね?
藤沢:というか、結婚とはフローがすべて、と言ってもいいぐらいです。どういうわけか日本の女性は、お金持ちと結婚すると、相手や相手の親の財産が自分のものになると勘違いしていて、それゆえにボンボンが好きな人が多いのですが、男選びには一にも二にも、実はフローなのです。男性について言えば、同様の理由で、いいところのお譲さんと結婚しても、あまり美味しいわけじゃなくて、むしろ危険だったりします。本人の所得はゼロなのに、贅沢だけは一丁前ですからね。離婚となれば、サラリーマンの旦那はコンピ地獄に嵌められます。
それから女性にとって、貧乏な男と結婚するメリットはゼロではなく、マイナスです。
──ゼロではなく、マイナス!?
藤沢:そう。だからこの本は、婚活中の女性にこそ読んでほしいと僕は思っているんですよ。どういう男性を、なぜ選ぶべきか、詳しく書きましたから。稼いでいるキャリアウーマンや、結婚に焦っている女性の中には、癒しとか、家事への協力を求めて、男には経済力を求めないという人がいるかもしれない。けれど結婚というのは、所得が多いほうから少ないほうへと一生続く支払義務が発生する「金銭契約」なのです。貧乏な男性と金銭契約を結ぶメリットは、ゼロどころか、負債を抱え込むという意味で、とんでもないマイナスです。
──でも、金銭に換算できない喜びや幸せというものはありますよね?
藤沢:もちろん「貧乏な男と恋愛するな」というバカなことは申しません。むしろ、僕の真意は真逆で、自分でお金を稼げる女性が、相手の所得なんか気にせず、愛しあい、ときに子どもを作るというのは、大変に素晴らしいことだと思います。ただし、その場合は、<事実婚>でいいのです。家庭を持つことも、子どもを産むことも、当然ながら結婚しなくてもできます。事実婚を妨げる法律は一切ありません。わざわざ、女の人が、相手の男を生涯にわたって養うという法的義務を負うこともない。
欧米ではふつうの<事実婚>や<婚外子>が日本でもっと増えてもいい、と僕は思っています。僕は<事実婚>が社会で受け入れられるほうに堰(せき)を切るために、この本を書いたところがあるんです。
──藤沢さんが勧める<事実婚>のメリットについて、【後編】で詳しくお聞きします。
藤沢数希■理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家。金融日記管理人。著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』『「反原発」の不都合な真実』『外資系金融機関の終わり』『ぼくは愛を証明しようと思う。』がある