ニュージーランドと日本のハーフ、純アリス(撮影:池谷朗)
「スカウトするたびに女の子たちには『東大を卒業したって初任給は6万かそこら。それがスターになったら何十倍も稼げるんだよ』と言って聞かせました。その言葉が彼女たちには何よりも響いたんです」
上条氏にとって特に思い入れが強かったのが小山ルミだ。まだ中学生の時から目をかけ、卒業と同時にデビューさせると、歌やドラマ、映画と大活躍する。ただ、奔放な恋に走って仕事に身が入らなくなった時があった。上条氏は、およそ信じられない抗議活動に出た。
「ルミが男と2人でいるところに出向き、私はハサミで自分の胸を刺しました。その男に『お前は俺と同じような気持ちでルミの面倒を見られるか!』って。そのあと、出血がひどくて病院に担ぎ込まれ、医者から『あと3センチずれていたら死んでいた』って大目玉を食らいましたね」
この一件で小山ルミは改心し、本腰を入れて芸能活動に向き合ったそうだ。上条氏は自身のスカウト歴の中で、意外な失敗談も明かす。
「アン・ルイスもスカウトしていて、本当は彼女をゴールデン・ハーフの一員にしたかった。ところが、作詞家のなかにし礼さんが彼女を育てたいという。それでアンはあきらめたんだ」
ゴールデン・ハーフの功績は、ハーフという呼び名を定着させただけでなく、バラエティ番組に真剣に取り組んだ「元祖バラドル」であることだ。ザ・ドリフターズや堺正章の番組で、体当たりのギャグに挑んだ。その流れを汲んで、マギー・ミネンコの「乳揉めー!」やシェリーの「ケツ見ろ!」といった「体を張ったギャグ」が生まれ、バラエティ番組でハーフタレントが引っ張りだこという現在の風潮にもつながっていく。