私が警察監修で一番注意しているのは、適正に逮捕されているかどうか。台本に「手錠をかけた」とだけ書かれていても、それでは済まない。逮捕には「現行犯逮捕」「通常逮捕」「緊急逮捕」があります。台本を読んでそこが曖昧だったら、意見を提案することもありますね。
三課ならではの話としては、たとえば盗難車が集まる解体屋に捜索に入るシーンがありました。台本では強行突入するような形でしたが、実際は逮捕現場以外では令状がないと踏み込めません。なので、台本に「令状は取ってあるよ」というセリフを付け加えました。
また、一言で警察といっても地域やそれぞれの署によって“文化”が異なる。警視庁では「主任」でも、他県では「ハンチョウ」「係長」と呼ぶなど、言葉の違いもありますし、鑑識さんが着ている服が県によって色が違っていたりする。そういうところもチェックしています。
最近は『PとJK』という、警察官と女子高生の恋愛映画で、「16歳の女子高生が23歳の警察官と結婚できますか?」というところから相談に乗りました。法律上は親が同意すれば大丈夫ですが、警察としては「高校を出るまでは、という指導が入るでしょう」とお話ししました。
でも、プロデューサーに「それでも結婚するといったら?」と聞かれたので、「それは仕方ないですね」と。漫画原作の恋愛ドラマですから、いつもよりかなり甘めの監修でした(笑い)。
警察監修も聞き込みと一緒で十人十色。私も作品に“自分の色”を出していきたいですね。
●しおざわ・りいちろう/1973年、警視庁入庁。1985年に捜査第三課に異動後、以降警部まで全階級で同課に在籍。初代刑事部技能伝承官として刑事養成講習の講師を務めるなど後継者育成に貢献。2011年3月退職後、警察監修の道に。
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2017年4月21日号