「健さんはお酒を持ってきて、お茶を飲んで帰って行きました。僕はお酒を飲みますが、健さんは飲まないんですよ。一緒にご飯を食べるときは、日本酒をワイングラスに1杯くらい飲んでいましたけどね。

 健さんは佇まい、とくに斜め後ろ姿が、ただそこにいるだけで絵になりました。ひとりの人間として人生を背負って生きているのが、後ろ姿に表われていました」

『追憶』の主演を岡田にオファーしたのも、人が背負っている“陰”の部分が共通していると感じたからだ。

「今回、岡田さんの斜め後ろ姿に健さんを重ねて仕事をしていました。健さんを継ぐような俳優になってもらえればいいと思っています」

 監督として映画に関わり50年以上が経つ。若いころからずっと趣味も仕事も映画だったが、最近は午後の情報番組が面白いと、意外な一面を見せる。

「小池百合子都知事やトランプ政権など、最近のニュースは下手な小説よりよほど興味深い。時間があるときは、ただテレビの前にじっと座っていることが多いです。

 夕方にはビールを飲んでしばらく居眠りし、深夜1時か2時頃に目覚めると、家人が起きてくるまでの4時間くらいは本を読んでいます。何か映画の種になるものはないかと思って読んでいますけど、そんなもの、なかなかありませんよ(笑い)」

 取材の最後に、映画を通して伝えたいものは何かと問うと、やんわりと、でもはっきりとこう語った。

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