だが、その舛添氏が辞任し、小池氏が都知事に就任すると風向きが大きく変わったように見えた。小池氏は都の五輪予算に大ナタを振るい、延遼館の建設を凍結した。
にもかかわらず、クルーザーの建造は計画通り続行されたのである。クルーザーの入札が行なわれた昨年12月といえば、小池氏が打ち出した五輪ボート会場の「海の森水上競技場」や水泳、バレーボールなど3施設の新設見直し問題で森喜朗・五輪組織委員会会長らと揉めていた時期に当たる。
会場移転により新設費用の節約を目指した小池氏だが、ボート競技や水泳競技の会場移転断念に追い込まれ、残ったバレーボール会場も、当初案通りに東京・有明アリーナの新設で決着したのが昨年12月16日。その3日後にクルーザーの入札が行なわれていた。
「400億円の削減につながった」──会場移転に失敗した小池氏は、見直し議論で五輪施設の整備費用を節約できたと強調した。しかし、その陰で豪華クルーザー建造にゴーサインを出していたのは、五輪費用節約を期待する都民への“裏切り”ではないか。
第一、五輪の来賓をもてなす迎賓館は建設しないのに、迎賓館まで来客を運ぶクルーザーだけ建造するというのだから、これほど「もったいない」税金の使い途はない。