◆豪華すぎる仕様
100フィート級の外洋クルーザーは「メガヨット」と呼ばれる。あるクルーザーオーナーは、東京都が20億円をかけてメガヨットを建造中だと聞いてこう驚いた。
「エンジンや装備で価格が大きく違ってくるが、100フィート級なら相場は6億~8億円。アジムットのブランド料が加わるとしても、20億円は倍以上。その値段なら内装も含めて相当豪華なはずです」
日本の造船会社から見ても贅沢な仕様だという。
実は、入札にはアジムット社の他に墨田川造船(本社・東京)が名乗りを上げていた。同社は「他の手持ち工事でいっぱい」という理由で最終的に応札を辞退し、アジムット社が無競争で受注したが、墨田川造船の営業担当者は、「都から提示された仕様書によれば、デッキ部分は高級材のチーク材で、内装も豪華だし、スピードも出せるようにしたいという内容。そうした要望に応えると20億円はかかるでしょう」と話す。
一体、東京都はクルーザーにどんな装備と内装を施そうとしているのか。東京都港湾局総務部は、装備についてこう説明する。
「新視察船は羽田空港に乗り付けるために喫水を浅く設計されている。エンジンは浅い海用にスクリューではなく、ウォータージェット推進器を使う。そのため速度も25ノット以上と速い。災害時の利用を考えて夜間航行の設備もつける。
備品もIH調理器はじめ日本製。賓客をお招きすることを念頭に置いた2階の応接室には、テーブルや絨毯など和風の調度品を装備する。外国の方に『和』をご体験していただくことを想定しているからです。デッキの床材は名前をあげて指定してはいないが、それなりにしっかりした素材を使うように規定しています」