一方で、現地の造船所では、この“豪華すぎる仕様書”をめぐる意見の食い違いでトラブルが発生し、クルーザー建造がストップしているという情報もある。船舶関係者の話である。
「東京都側はクルーザー内に『京都の織物の絨毯』を使うことを要求している。それに対して造船所側は『そんな絨毯は使ったことがない。イタリアの同等品にしてくれ』と言い出すなど、内装で相当揉めているようだ。世界のアジムット社も日本の調度品が高いのに驚いているんじゃないか」
日本の船舶検査は非常に厳しく、基準を満たさない装備では登録できない。そのため、新船建造の際には、事前に運輸局に仕様書のチェックを受けてから建造に取りかかる慣行がある。しかし、現地イタリアで仕様をめぐる交渉がまとまらないため、「まだ建造に着手できていない」(同前)というのである。
これが小池知事の掲げる「都民ファースト」の姿なのか。本誌が小池氏に取材を申し込むと、港湾局の広報担当課長が、「知事はスケジュール多忙につき、対応の余裕がございません。質問にも答えられない。港湾局が東京都として回答する」そういって代わりに取材に応じた。
──五輪費用削減を掲げる小池知事はクルーザー建造を見直さなかったのか。
「新視察船は新東京丸の老朽化に伴い建造するもの。たまたま東京五輪のタイミングなので、海外の賓客をお乗せするなど五輪にも活用はするが、都民の方の視察など様々に利用いただく予定で、贅沢とか高級化したという指摘はあたらない」