国際情報

日本は北朝鮮の特殊部隊やテロリストの上陸を阻止できるのか

旧防衛庁の想定では侵入部隊の80%を撃退できると想定したが…

 核実験の継続を示唆するなど、予断を許さぬ北朝鮮情勢。日本政府はミサイル攻撃時に国民をいかに守るのかといった防衛策や、有事の際に日本に大量流入するかもしれない難民をどうやって保護するのかといった対応策を急ぎ検討しているという。

 だが、仮に有事につけ込んで北朝鮮国内で訓練を積んだ軍の特殊部隊が日本への侵入を企てたら、果たして上陸を「阻止」することなどできるのだろうか──。朝鮮半島問題研究家で近著に『北朝鮮恐るべき特殊機関』がある宮田敦司氏がシミュレーションする。

 * * *
 安倍晋三首相は4月17日に開かれた衆院決算行政監視委員会で、北朝鮮難民が大量に日本へ漂着した際に、工作員や特殊部隊員が混ざっている可能性について触れている。

〈日本政府は最大数万人の難民が船で日本海を渡ってくると想定しており、日本海側に数カ所の拠点となる港を選定し、その拠点港において身元や所持品を調べ、北朝鮮の工作員やテロリストの入国を防ぐ。また、北朝鮮が韓国を攻撃した場合は韓国からも難民が来ると想定し、臨時収容施設の設置計画を検討するとしている〉(毎日新聞・電子版/2017年4月28日)

 つまり、特殊部隊員が難民を装って日本へ侵入する可能性があるのだ。政府は「工作員やテロリストの入国を防ぐ」としている。テロリストとは人民軍偵察総局に所属する特殊部隊員を指していると思われるのだが、どのように「入国を防ぐ」のか筆者には想像できない。

 工作員やテロリストが、武器や爆発物などを所持したまま検査を受けることは考えにくいし、そもそも、工作員やテロリストが民間人と一緒に検査を受けることはないだろう。最後まで難民を装って侵入するつもりならともかく、漂着した海岸に上陸する可能性が高いからだ。

◆防衛庁(当時)の想定

 2003年から2005年にかけて、防衛庁(当時)と陸上幕僚監部が、北朝鮮軍の特殊部隊員が侵入した場合の対応について検討したことがある。現在の防衛省が新たな対応策を策定したという報道がないため、おそらくこの計画は現在も踏襲されていると思われる。

 防衛庁は、日本海沿岸に高速艇や潜水艇で侵入を試みる特殊部隊に対し、海上自衛隊が80パーセントを撃退、陸上自衛隊が沿岸部で残る勢力の4分の3を撃退。残り5パーセントが内陸部への侵入に成功すると想定している。

 侵入する人数については、防衛庁は数百人、陸上幕僚監部は800~2500人と想定している。

 防衛庁はもともと数千人の特殊部隊員による侵攻を想定していたのだが、米軍が「多くても数百人」と主張したため、日本側が歩み寄って「数千人」を「数百人」に変更し、基本的に自衛隊が単独で対処することにしたという経緯がある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト