◆「戦前にもエロ本は出版されてた」

 小林は平成より昭和の時代をずっと長く生きている。

──昭和の時代をどう思いますか。

「そうですね、ひどい戦争があって、その焼け跡から人々がみな立ち上がって奇跡的に日本が再建できた。それから、みんな食いまくり飲みまくったバブルの時代があり、それが崩壊して平成という時代がやってきた。ところが最近の風潮を見ていると、下手すると日本人がまた戦争に向かうんじゃないかと思うことがある」

──それはなぜだと思いますか。

「戦争を肌身で知っている我々の世代は二度と戦争をしないと誓った。それが平成になって風向きが変わり始めたのは、戦争から70年あまり経つと人間という生き物は、過去のことをすっかり忘れちゃう習性があるからとしか思えません。いま大阪の方のヘンな幼稚園でヘンな歌を歌わしているでしょ」

──国有地払い下げ問題で世間を騒がせている森友学園ですね。園児に「教育勅語」を暗唱させ、「愛国行進曲」を歌わせている。

「あれを見てまだ僕が5、6歳の頃、右翼がオート三輪に乗って『愛国行進曲』をガンガン流して町中を行進してゆく姿を思い出しました。まだ戦争前でしたが、世の中がどんどん退廃的になっていった。

 ダンスホールは朝方までやっているし、人々は『東京音頭』で毎日お祭りのように踊りまくっている。戦争前は財閥や軍人が威張って、窮屈な時代だったと思っている人が多いけど、そんなことはありません。エロ本だって梅原北明(*1)や斎藤昌三(*2)が盛んに出版していた」

【*1/大正・昭和時代の編集者・翻訳家。性風俗関係の書籍を刊行し、その多くが発禁処分に】

【*2/大正・昭和時代の書物研究家・編集者。雑誌「いもづる」「書物往来」などを創刊した】

 戦前の日本は恐しく明るかった。戦前というと、つい眦を決した特攻隊という印象に囚われがちだったので、この見方には意表をつかれた。

【PROFILE】こばやし あせい:1932年、東京都生まれ。慶應大学経済学部卒業。服部正に師事し、1961年に作曲家デビュー。歌謡曲、ドラマ音楽、CMソング、アニメの主題歌など多数作曲。1974年、向田邦子脚本「寺内貫太郎一家」の父親役に起用され、俳優としても脚光を浴びる。76年、都はるみに楽曲提供した「北の宿から」で日本レコード大賞。

■聞き手/佐野眞一(ノンフィクション作家)

※SAPIO2017年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン