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2017.05.10 16:00  SAPIO

小林亜星「このあたりで人類は終わるんじゃないか」

◆「戦前にもエロ本は出版されてた」

 小林は平成より昭和の時代をずっと長く生きている。

──昭和の時代をどう思いますか。

「そうですね、ひどい戦争があって、その焼け跡から人々がみな立ち上がって奇跡的に日本が再建できた。それから、みんな食いまくり飲みまくったバブルの時代があり、それが崩壊して平成という時代がやってきた。ところが最近の風潮を見ていると、下手すると日本人がまた戦争に向かうんじゃないかと思うことがある」

──それはなぜだと思いますか。

「戦争を肌身で知っている我々の世代は二度と戦争をしないと誓った。それが平成になって風向きが変わり始めたのは、戦争から70年あまり経つと人間という生き物は、過去のことをすっかり忘れちゃう習性があるからとしか思えません。いま大阪の方のヘンな幼稚園でヘンな歌を歌わしているでしょ」

──国有地払い下げ問題で世間を騒がせている森友学園ですね。園児に「教育勅語」を暗唱させ、「愛国行進曲」を歌わせている。

「あれを見てまだ僕が5、6歳の頃、右翼がオート三輪に乗って『愛国行進曲』をガンガン流して町中を行進してゆく姿を思い出しました。まだ戦争前でしたが、世の中がどんどん退廃的になっていった。

 ダンスホールは朝方までやっているし、人々は『東京音頭』で毎日お祭りのように踊りまくっている。戦争前は財閥や軍人が威張って、窮屈な時代だったと思っている人が多いけど、そんなことはありません。エロ本だって梅原北明(*1)や斎藤昌三(*2)が盛んに出版していた」

【*1/大正・昭和時代の編集者・翻訳家。性風俗関係の書籍を刊行し、その多くが発禁処分に】

【*2/大正・昭和時代の書物研究家・編集者。雑誌「いもづる」「書物往来」などを創刊した】

 戦前の日本は恐しく明るかった。戦前というと、つい眦を決した特攻隊という印象に囚われがちだったので、この見方には意表をつかれた。

【PROFILE】こばやし あせい:1932年、東京都生まれ。慶應大学経済学部卒業。服部正に師事し、1961年に作曲家デビュー。歌謡曲、ドラマ音楽、CMソング、アニメの主題歌など多数作曲。1974年、向田邦子脚本「寺内貫太郎一家」の父親役に起用され、俳優としても脚光を浴びる。76年、都はるみに楽曲提供した「北の宿から」で日本レコード大賞。

■聞き手/佐野眞一(ノンフィクション作家)

※SAPIO2017年6月号

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