──小林さんにとって平成とはどんな時代でしたか。
「いまは昭和の時代に比べて比較にならないくらい情報量はふえているのに、行き詰まり感ばかりが増しているという感じがしますね」
小林は熱狂的な洋画ファンである。
──実は昨日、アカデミー賞を総なめするといわれた「ラ・ラ・ランド」を観てきました。はっきり言って評判倒れの映画でした。小林さんが激賞している「巴里のアメリカ人」や「雨に唄えば」などと比較すると、はるか足元にも及ばない。
「そのミュージカル映画を私は観ていませんが、よくわかります。大体、映画にしても音楽にしても、ヒットするのは8割以上がアメリカ発のものだったんです。今はジャズも衰退するし、ハリウッドも弱体化する一方です。アメリカだけでなく、人類みんなが昔の勢いがなくなっちゃったという感じですね」
これを聞き、トランプが大統領になったのも、衰微した「国力」をなんとか回復しようとするアメリカの窮余の一策ではないかと思った。そう言うと、小林は「そう思いますね。ヒットラーだって選挙で選ばれた」とつづけた。小林は、ヒットラーは独裁で政権をとったと思われているが、実は選挙で政権をとった、だから恐ろしい、と言っている。この意見に戦中派の自負と自省が垣間見えた。
──世界的にリビドーが落ちているというわけですね。
「黒澤(明)さんや小津(安二郎)さんがいた頃は、日本映画にも力があった。いまあるのは閉塞感だけです。このあたりで人類は終わるんじゃないかって気もする」