たしかにある部分において、女性のほうが男性よりも柔軟性や適応力に長けて、肝が据わっている。制作発表記者会見の席で、浅丘は前述のシーンについて、
「菊村栄と白川冴子は20年ぶりに会ったわけですが、実際に私自身と石坂さんは、16年ぶりにお会いしました。その両方の想いを込めて長いこと抱き合わせていただきました(笑い)。楽しゅうございました。そしたらマヤがジロ~っと私たちのことをみておりました。ふふ、もちろん芝居で、ですよ」
と、ユーモアたっぷりに語った。隣に座っていた石坂はやや居心地が悪そうな面持ちだったが、会場は浅丘のスピーチに大いに沸いた。人生を共にした過去も恋心も、からっと明るく振り返れる年頃になった──。各々が時間を積み重ねたいまだからこそ、共演を心から楽しめているのだろう。
82歳の倉本が同世代へ贈る作品だけあり、ドラマでは老いや死についても、正面から向き合っている。
「人が死を迎えることはどういうことかという根底のテーマへ向けて、それに逆らうように、どこに残っていたのかわからない栄の焼けぼっくいの恋心がポッポポッポ点いて、『人生の最後を飾るいい経験だった』と落ち着いていく。そうしたひとつの交響曲のような大きな流れがあることに、最近気付きました」
人生を交響曲とするならば、これまでのすべての出会いが幾重にも重なって、今日という音を奏でている。遠回しだが、それが再会についての石坂流の答えなのかもしれない。