《「先生ーッ!」といきなり栄(石坂)にハグする白川冴子(浅丘)。二人、結構長時間抱き合う。じろりと白い目で見る水谷マヤ(加賀)。冴子、やっと離れて大納言(山本圭)に、「そっちにつめて。私ここに坐る」。マヤもマロ(ミッキー・カーチス)に「あなたもつめて。私ここに坐る」》
と、栄を取り合うように冴子とマヤがカウンターで両隣に陣取るのだ。加賀とは若かりし頃、恋人関係だった時代もある。ゆえにこの3ショットは、往年のファンにとってたまらない光景となった。このシーンについて石坂は「台本の通りに演じただけです」とあっさり振り返ったが、浅丘、加賀との共演については懐かしさを込めて、こう語った。
「僕らは世代的には1こずつぐらい違うのかな。いまの時代もそうですけど、女優さんのほうが出たら早いんですよね。『うわっ!』って勢いが。男の子って割と、もにゃもにゃしているところがあるんです。演技的なものがついてこない。芝居は自転車みたいなものでコツが言えないところがあるんですよ、人には。そのひとつのコツが分かるとスッといく」
男性のほうが、その時期が訪れるのが遅い気がするという。聞けば随分と長いこと、その時期を待ったようだ。
「自分も彼女たちと同じような芝居がややできるようになった、と思えるようになってきたのは50歳ぐらい。その時は非常に嬉しかったですよねぇ。
加賀さんと浅丘さんとはお芝居をした回数が非常に多いので、う~ん、どっちもね、僕は当時からすごく啓発されていたところがあったんです。そこから四半世紀経って、今回は負けないようにと、思っていますよ」