ある目的地まで運ぶ仕事を引き受けるのは、民法でいう請負契約です。請負契約では「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」と定められています。
要するに、乗車時に告げられた目的地までの運送引き受け契約が成立したとしても、目的地到達前に気が変わった乗客は途中下車ができるのです。その場合、メーター表示の下車地点までの料金を支払えば、損害を賠償することになりますので、問題なく乗客は下車でき、運転手も特に損をしたことにはなりません。
結果的には、目的地までの約束が成立していることを理由にして、この乗客に対し、法によって制裁することはできないということです。しかし、年齢だけを理由にする差別が不合理となる場合もあり、それが遺憾なことには共感します。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年5月26日号