NPO法人高齢者安全運転支援研究会の平塚雅之事務局長は、この提案に同意する。
「AT車でペダルの踏み間違いが起こりやすいのは、例えば駐車場や高速道路の料金所などでお金を払う場面です。料金所の機械にお金を入れようと、運転席から身を乗り出す。その際に、ブレーキペダルから足が離れてしまうと、AT車の場合、クリープ現象で前進してしまうので、慌ててブレーキを踏もうとする。このとき、右足の位置がずれているのに気づかずにアクセルを踏んでしまい、急発進して追突事故を起こします。
一方でMT車は、一時停止時には左足でクラッチペダルを踏んでいる。そのため、仮に誤って右足でアクセルペダルを踏んでしまっても、エンジンを“ふかす”だけで、急発進することはない」
「MT車のほうが事故が起こりにくい」ことを裏付ける研究結果がある。
2004年、鳥取環境大学環境情報学部情報システム学科の鷲野翔一教授(当時)は全国の交通事故を「右折事故」「左折事故」「出会い頭事故」「追突事故」「正面衝突事故」の5パターンに分けて分析した。その結果、「正面衝突」を除く4種類の交通事故において、MT車の事故率はAT車の約2分の1だった(「正面衝突」の事故率はほぼ同程度)。