「毒矢を消す」手法は森友・加計問題でも使われた。疑惑が持ち上がるや安倍首相は国会で「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」と全否定し、都合が悪い文書が公表されると、菅義偉・官房長官が「怪文書みたいなもの」と頭ごなしに否定してみせた。とはいえ、スキャンダルの否定だけでは「空気」を支配するまではできない。
「安倍政権は告発者に対するカウンター攻撃が巧妙」
そう指摘するのはジャーナリズム論の水島宏明・上智大学新聞学科教授だ。
森友問題では、籠池泰典・前理事長側の補助金不正受給で検察が捜査に乗り出し、加計問題でも告発者である前川喜平・前文科省次官の出会い系バー通いの過去が読売新聞で暴露されたことを指している。
「前川前次官の証言は、以前であれば政権が吹き飛ぶような内容だったにもかかわらず、『そうはいっても、彼にもスキャンダルがありますよね』という疑惑の本筋とは関係ない情報を出すことで、国民にはどっちもどっちという印象を持たせてダメージを打ち消してしまう。政権のそうした世論の誘導の仕方は巧妙といえる。
これはネットの影響も大きい。米国のトランプ大統領などが典型だが、メディアに事実を暴かれても“それはフェイクだ”と平気で言い張るでしょう。ネットの情報ではフェイクニュースと事実の真偽の区別がつきにくいことを利用しているわけです」