国内

ネットの反差別運動の歴史とその実態【1/4】

◆サッカーに関する日韓の諍い

 この時、日本のネットでは「嫌韓」の動きが出始めてきた。準決勝まで韓国代表が進んだにもかかわらず、日本は決勝トーナメント1回戦で敗退したことをバカにするような韓国人の意見も紹介されたからである。

 サッカーに関する日韓の諍いについては、2011年1月のアジアカップ準決勝の日韓戦の時に発生。ゴールを決めたキ・ソンヨンが、頬をかく「猿マネパフォーマンス」をし、日本を侮辱した。キは「観客席の旭日旗を見て涙が出た」といった理由を揚げ、日本への対抗意識を示したのは旭日旗のせいである、という説明をした。しかし、これは単なる差別主義者との批判から逃れるための咄嗟に作り上げた言い訳だろう。

 また、東日本大震災の後に行われたACL(アジアチャンピオンズリーグ)のセレッソ大阪対全北戦で、全北のサポーターが「日本の大地震をお祝います。」と書かれた垂れ幕を掲げ、セレッソ側の抗議で前半途中に取り下げられたこともある。旭日旗についてはキ・ソンヨンの件以降問題視されるようになり、2013年7月にソウルで行われた東アジア大会の日韓戦で日本のサポーターの男性が旭日旗を掲げ、没収された。男性は韓国のサポーターが伊藤博文殺害で知られる安重根の横断幕を掲げたことへの「仕返し」として旭日旗を掲げたとNEWSポストセブンの取材に対して明かしている。他にも2017年5月にACL・川崎フロンターレ対水原戦で川崎サポーターが旭日旗を掲げ、AFC(アジア・サッカー連盟)主催の1試合の無観客試合と罰金1万5000ドルが言い渡された。

 2014年3月のJリーグ浦和レッズ対サガン鳥栖戦では、観客席への入り口に「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられた。「日本人しか入ってはいけない(外国人お断り)」とも解釈できるだけに問題視され、浦和は次のホームでの試合である清水エスパルス戦でJリーグ史上初の無観客試合実施という処分を受けた。なお、この横断幕の意図は、開幕前に浦和へ移籍してきた元韓国籍の李忠成に向けたもの、という分析もある。

 2017年5月には浦和レッズと済州がACLで試合をしたが、1点差でリードする浦和が試合終了直前にコーナーポスト近くでボールを回し、時間稼ぎをしていたことから小競り合いが発生。そこになぜか韓国の控え選手、ペク・ドンギュがピッチ内に乱入し、阿部勇樹にエルボーを食らわせた。浦和の勝利となった試合終了後、槙野智章が大喜びしていたらそれが韓国にとっては「挑発行為」に見えたと主張しており、槙野が韓国の選手やスタッフから追いかけられる事態にもなった。

 話はサッカーから外れる。日本では2004年の『冬のソナタ』を始めとした韓流ドラマや、東方神起を始めとしたK-POPスターが大ブレイクをする時期の少し前でもある。その頃、新大久保のコリアンタウンには次々と韓流グッズショップやサムギョプサルの店ができ、韓流ブームはメディアも巻き込み、女性を中心に盛り上がっていった。そんな状況を冷ややかに見ていたのが、2ちゃんねるを中心としたネットの掲示板の男たちである。当時のマスメディアには「韓国の男性はロマンチック」「韓国の男性は身長が高くて素敵」といった論調が多く(韓流好き女性のコメントで構成される番組が多かった)、日本の男が見下された感があったため「なんかむかつく」といった状況があり、嫌韓はくすぶり始めてきた。2ちゃんねるでは公然と「チョン」という言葉が使われ「ホロン部」(検索してください)などの言葉も使われていた。

 そして2005年には漫画『マンガ 嫌韓流』(2005年)が大ヒットをし、嫌韓や韓国・在日への差別への土壌は固まってきた。2006年、韓国から「オーマイニュース」という市民記者サイトがやってきて、親韓系の記事が多数書かれるようになり、コメント欄では嫌韓派の荒らしコメントが目立った。オーマイニュースの「市民記者」の中には左翼活動家もおり、親韓・親中の記事も数多く掲載されていた。2ちゃんねるでは韓国を揶揄する書き込みが続々とされ、語尾に「ニダ」をつけてバカにする者も多数いた。(続く)

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