国内

ネットの反差別運動の歴史とその実態【1/4】

◆「しばき隊」「反差別界隈」「彼ら」

 前置きが長くなったが、本稿では、「しばき隊」を含めた反差別のネットでの動きを振り返ってみる。膨大なエピソードがあるので、一部ヲチャー(ウォッチャー)にとっては物足りないものになるかもしれないが、初心者向けということで書いてみる。恐らく、右派以外の職業的モノカキや知識人は彼らを正面切っては批判してこなかっただろう。なにせ、批判するとネトウヨ/レイシストのレッテルを貼られてしまうのだから。また「反差別」を標榜している人間を非難すると自分が差別主義者だと思われてしまうため、批判はし辛かったことだろう。いや、もしかしたら単に批判した後の一斉攻撃がウザかったからおかしな行動を彼らがし続けていることは分かっていたものの、スルーしていたのかもしれない。

 また、日本のジャーナリズム界隈では、サヨクの方が高く評価される傾向がある。保守派や右翼は「戦前の日本に戻したいのか」といった言われ方をし、叩きの対象になりがちだ。そして「●●のネトウヨ化が止まらない」と書かれるのだ。津田塾大学の萱野稔人教授は『サンデーモーニング』(TBS系)にもコメンテーターとして出演するほどのリベラル扱いをされていたが、アメリカでトランプ政権が誕生した後に出演した『報道ステーション』(テレビ朝日系)における発言で「ネトウヨ化」レッテルを貼られた。萱野はメキシコとの国境に住んでいるアメリカ人の白人が銃を持っている件について不法入国移民がいる以上仕方ないといった趣旨の発言をした。また、日本のメディアがトランプ支持者を低収入の低学歴扱いしたことにも苦言を呈したり、共謀罪に対して議論は尽くしたと意見したところ「萱野のネトウヨ化が止まらない」的な言われ方をした。

 現在の日本のネットの一部では、「右か左か」「差別主義者か否か」といった二元論でのレッテル貼り、無駄な争いが横行している。これは本当になんの生産性もないし、結局は両派が互いを罵倒しあうだけの結果になってしまい、まったく意味がない。対話もできない状況が続いており、もはやネットなんて見ない方がいいのでは、と思うレベルである。その中心がツイッターであり、かつて愚行を自ら晒す若者が相次ぎ「バカ発見器」と呼ばれたツイッターはすっかり「ケンカ発生器」と呼べる代物になっている。

 本稿の主役は「しばき隊」である。ただし、全面的にそう呼ぶことはやめておく。時々出るかもしれないが、微妙な使い分けをする。「しばき隊」を使うこともあれば、「反差別界隈」を使うこともあれば、「彼ら」という言い方もする。これは彼らの発言をウォッチしてきた結果としての使い分けであり、言葉がこんがらがるかもしれないが、この3つの言葉を使う場合は同じ対象について述べていると考えていただきたい。

 理由は「しばき隊」という言葉を使うと妙に彼らの気分を害するからである。「しばき隊なんていない」「カウンターは個々人が勝手に集まっただけだ」「しばき隊は解散し、今はC.R.A.C.だ」といった反論をされるが、「しばき隊的な人々」という広義の意味で「しばき隊」は使われているのである。いちいち「人種差別のカウンター活動を始め、その成功体験が忘れられずとにかく何があろうとも『反差別』の錦の御旗の元『レイシスト』『ヘイト』認定をして糾弾の対象を見つけ、一斉に罵倒する集団」と書くのは長過ぎるし、この長文を略して「JCSNHRHNKIBS」と書いてもまったくワケが分からない。だから「しばき隊」と書くのが便宜上伝わりやすいのである。ただ、本稿では彼らが呼び名にこだわっている以上「反差別界隈」も含めた呼び方の使い分けを行う。

 この“「しばき隊」なんかいないロジック”は奇妙なほど彼らが当初対峙していたネトウヨと合致する。ネトウヨも「ネトウヨなんていない! 我々は路上に出ている!」と言うし、「在特会」と言えば「在特会だけじゃない。『行動する保守』だ。単に愛国者が集まっているだけだ」と言う。或いは「今日のデモ主催は在特会ではない。〇〇会である!」ともなる。「外に出ているんだったら『ソトウヨ』かよ?」といったツッコミも存在するわけで、何やらラベルを貼られるのを嫌がる点では共通しているにもかかわらず、互いに「パヨク」「しばき隊」「ネトウヨ」とラベルを貼り合っているのだ。「パヨク」については後述する。

関連記事

トピックス

大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン