国内

ネットの反差別運動の歴史とその実態【1/4】

◆韓国に対する空気の変化

 さて、今回の「奇妙な果実騒動」は私がこうして反差別界隈のここ何年間かの歴史を振り返るきっかけになったわけだが、元々私はネトウヨによる排外・嫌韓デモは問題視していた。もちろん今もそうである。何しろ、ネット上ではすべての不幸の元凶が韓国にある、といった言説が2000年代中盤以降蔓延していたのである。現在「嫌韓」を経て「呆韓」「忘韓」になったといった言われ方もするが2000年頃まで一般の人にとって韓国はそれほど気になる国ではなかったのではなかろうか。当時10代~30代ぐらいの多くの人間にとってはこの程度の認識だったかもしれない。

〈同じ黄色人種で、ソウルオリンピックを成功させたアジアの立場が近い国。キムチとか辛いものが好きで、よくデモをやっている国。統一教会の合同結婚式は意味が分からないけど、大韓航空機撃墜事件は気の毒でした。チョー・ヨンピル、ケイ・ウンスクの歌は聴いたことあるよ〉

 ところが、明らかに韓国に対する扱いが変わるのを感じた騒動があった。2002年、日韓サッカーワールドカップである。元々日本の単独開催が有力視されていた。と思ったらいつの間にか「コリアジャパン」ということになっていた。一体なんじゃ、こりゃ? と思いつつも「まぁ、そうなったからには一緒に成功させるか」といった空気に日本人はなっていったのである。ところが大会が開始すると空気が変わった。私が「こりゃ、韓国おかしいぞ」と思ったのが決勝トーナメント1回戦の日本VSトルコ戦だ。

 当時のテレビは大会の盛り上がりを伝えるべく、韓国国内のスポーツバーやパブリックビューイングの様子も紹介していたのだが、日本が負けたところで韓国代表の赤いユニフォームを着た韓国人が大喜びをしたのである。それ以前の試合でも日本がゴールしたところで韓国人がブーイングするなどのシーンは見られたが、トルコ戦では「日本が負けてここまで喜ぶか?」といった気持ちは抱いた。

 韓国は決勝トーナメント1回戦のイタリア戦、準々決勝のスペイン戦でダーティプレイを連発し、さらには不可解な誤審やイタリアのエース・トッティへの意味不明レッドカードなどもあり、FIFAが選ぶ「ワールドカップの10大誤審」にこの2試合から2つずつ入ったのだった。これは今でも韓国サッカーの汚点になっており、2ちゃんねるでも事あるごとに蒸し返されるイシューとなっている。

 私は世界中の人々とともにワールドカップ観戦をしたいと考えてタイ・バンコクへ滞在していたのだが、世界のバックパッカーが集うカオサンロードでは、イタリア人とスペイン人が激怒しまくる姿を見たものだ。あとはすでに敗退していたイギリス人やアメリカ人もイタリア人・スペイン人を慰めていた。

 そして準決勝のドイツ戦、カオサンロードの近くにある安宿街の韓国料理店で韓国のサポーターとともに試合を観戦した。試合が始まる前、韓国人と喋ったのだが「日本はもう負けちゃって残念だね。我々の代表は優勝するから!」などと言われた。喜ぶ彼らを前にしているだけに、「韓国の勝利を願い、一緒に応援しよう!」と私も答えた。だが、内心はドイツに圧勝してもらい、この高慢ちきなお調子者どもがシュンとなる姿を見たかった。そう、共同開催のパートナーである日本が負けた時のあの喜びっぷりを逆にオレがやってやるか、とさえ思ったのである。ただ、その場で日本人は私と日本人の友人2人の計3人だけ。他の客はほぼ全員韓国人なので、無用な挑発行為はやめた。試合中は、ドイツのチャンスには黙り、韓国のチャンスにはガッツポーズをする、というプレイをした。結果はドイツの勝利。その時の韓国人の落ち込みようはすさまじく、さすがにビールを付き合ったのだった。

 決勝はブラジルとドイツになったが、あろうことか、韓国人はブラジルを応援するのはまだしも、ドイツのFW・クローゼやGK・カーンの遺影を丁寧にも作り、「負けて下さい」とのパフォーマンスをしたのだ。なぜそこまで恨むんだ! 一つ印象的だったのが、ブラジルとドイツが決勝にコマを進めた翌日のバンコクの英字新聞の記事にこうあったことだ。

〈ドイツとブラジルありがとう! ようやく最終的にはワールドカップがまともなワールドカップに戻ったよ!〉

 イタリア、フランス、イングランド、スペイン、アルゼンチンといった強豪国が早々と姿を消す大会で決勝が「トルコVS韓国」だったら悪夢であるといった論調の記事である。疑惑の判定が続いた韓国はさておきトルコはとんだとばっちりを受けた感はあるが、この記事の論旨には納得した。

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