──それを承知の上で聞きたい。2009年の時点であなたがそうした「空気」を覆すことができていれば、現在の安倍一強のような、権力に不都合な者が潰されるような社会には向かっていなかったのではないか。
つまり、小沢でさえも潰されてしまうという状況を目の当たりにして、多くの者が権力批判を怖れ、諦める風潮が生み出されたといえるのではないか。
小沢:今思えばだけれど、僕の失敗は、あの時に民主党の代表を辞めたことだったかもしれない。あの時は麻生政権が行き詰まっていて、国民の間に政権を民主党に任せようという機運が広がっていた。そんな政権交代のチャンスを目前にして、僕に対する捜査のせいでマイナスになってはいけないと思って代表を降りた。
けれども、その判断は正しかったのか。僕は政権交代選挙でも選挙責任者として陣頭に立った。そのことを政権と検察とマスメディアが徹底的に叩いたけれど、総選挙では民主党が圧倒的に勝った。僕が辞めなくても勝ったよという人もいる。その意味では、本当に冤罪なのだから、辞めないという手はあったんだと思う。
──代表を辞任したのは、「小沢は辞めるべきだ」という国民の「空気」を感じたからではないのか。
小沢:それは違う。捜査されることによって政権が取れなくなったら、僕は悔やんでも悔やみ切れない。だから少しでも選挙での障害を減らそうとした。政治的、選挙戦略的な決断だ。