また、配偶者に裏切られた涼太と麗華の対応もすごい。事情がわかった後も美都に執着し、「みっちゃんはこんな汚いところで寝ちゃだめ」などと彼女を気遣い、責めない涼太。一方、無表情に「あたし、つらいよ」と夫に冷ややかな態度をとる麗華。この不気味な息苦しさもまた視聴者をドラマの引きずり込む要素といえる。
このドラマのもうひとつの特長は、登場人物がやたら飲食すること。第8話だけでも、美都が筑前煮を作り、涼太と夕食。別日には涼太がパエリアを作ってワインを選ぶ。家に帰りづらく、夜な夜な後輩と飲んでいる有島くんは、妻子と同じマンションの横山智美(中川翔子)一家と動物園でお弁当。涼太も親友真吾(山崎育三郎)と焼肉屋でジュージューと煙を浴び、最後は美都に蕎麦をふるまう。ついでに言うと、真吾は、美都のママ(麻生祐未)のスナックで一杯やり、美都の勤め先の眼科の先生(橋本じゅん)美女とバーで飲んでます。
飲むわ食べるわ。そこで長年、「昼ドラ」を見てきた私は思い出した。かつて昼ドラの過激な愛憎劇には、驚くべき「食」の場面が出てきたではないか。皿の上でサクサクに見えたたわしコロッケ、財布をこんがり焼いた財布ステーキ、生クリームたっぷりの携帯ケーキ…。「あなそれ」にも部屋の床一面にカニが敷き詰められているという衝撃シーンが出てきた。
これは有島くんの「悪夢」で、夢か…とがっかりしたが、今後、昼ドラに負けない強烈フードが出てくる可能性はある。もしかして、これまでの食のシーンは、誰かの胃袋への恐るべき復讐劇の前触れではないか? 気になる。