回復治療で日本有数の評価を受ける東京都内のリハビリ専門病院。読売ジャイアンツの長嶋茂雄・終身名誉監督が脳梗塞から“奇跡の復活”を遂げた病院としても知られる。その8階VIPフロア。入院中の谷垣氏がデイルーム(食堂)に姿を見せたのは5月末だった。
自転車競技用のサイクルウエアの上衣を着た谷垣氏は、介護スタッフが押す車椅子でテーブルに付くと、目元が気になるのか右手でしきりに拭う仕草をみせた。
食事が運ばれると、右手にスプーンを持ち、口に運ぶ。咀嚼する動きは大きくゆっくりに見える。食事の介助はない。30分ほどかけて食事を終え、右手でコップを持ち、ストローで飲み物を飲む。その間、同席した他の患者と会話をする様子はなかったが、表情にはリハビリに励む強い意志が宿り、確かに「政界復帰は近い」との印象を受けた。リハビリ専門医が語る。
「頸髄損傷には全身麻痺となるC1から軽い症状のC7までの7段階がある。右手が動くのであれば、少なくとも首から上は大丈夫で判断能力にも問題ないでしょう。読書などもできるはずです。さらに杖を使って歩くリハビリをやっているとすれば、政界復帰は十分可能ではないか」
車椅子の政治家といえば、アナウンサー時代の舞台転落事故で脊髄を損傷し、車椅子で郵政大臣を務めた八代英太氏やギラン・バレー症候群を発症して車椅子でリハビリを続けながら参院選に当選、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の共同議長を務めた川口順子・元外相がいる。