ビジネス

SB孫正義氏 悩ましい後継者問題に「人工知能」の出番?

まだまだ事業意欲旺盛なソフトバンク・孫正義社長だが……

「60歳での“引退”を取り消されましたが、今後、ご自分の知識や経験、思考パターン、アニマルスピリットなどをすべて教え込んだ『人工知能』を、将来の後継者に据えようと考える可能性はありますか?」

 6月21日に開催されたソフトバンクグループの株主総会。その場で質問に立った株主は、“荒唐無稽な話ではない”と前置きまでしたうえで、同社の孫正義社長にこう大真面目に尋ねた──。

 直近のソフトバンクといえば、孫氏が「ソフトバンクは携帯電話の会社だと思っている人がまだたくさんいるが、それは一つの道具に過ぎない」と強調するように、未来の情報革命を担うと見越した企業や事業に惜しみなく先行投資している。

 中でも孫氏がもっとも期待を寄せるのが、スマホなどモバイル向けチップで世界99%のシェアを握る英アームの買収である。

 1800億円の売上高だったアーム社を3兆3000億円という破格の金額で買収したことに、ソフトバンクの社外取締役を務める永守重信氏(日本電産の会長兼社長)も疑問を呈したというが、孫氏の最近の口癖にもなっている「シンギュラリティ(技術的特異点/コンピューターチップによって人間の知能を上回る“超知性”が誕生すること)」の覇権を目指すソフトバンクにとっては、「IT業界の隠れた宝」(孫氏)というわけだ。

 また、ロボット開発を手掛ける米ボストン・ダイナミクスを買収したのも、超知性を持ったコンピューターチップをロボットに組み込むことで、あらゆる産業や人間の生活を一変させ、自らの手でIoT(モノのインターネット)社会を牽引したいとの強い思いが表れている。

 そうしたソフトバンクの壮大な経営ビジョンもあり、冒頭、株主総会での“珍問”が飛び出したのである。

 孫氏は苦笑いしながらも、「人工知能の能力は上がっていきますが、人間の集団を率いて、人間に貢献するという意味で、そこは生身の人間に後継者になってもらいたい」と答えた。だが、孫氏の経営ビジョンを誰が引き継ぐか──というソフトバンクの後継者問題は、笑ってばかりもいられない最大の課題となっている。

 自伝ではすっかり有名になっているが、孫氏は19歳のときに早くも「50歳で事業を完成させ、60歳で引退する」と人生80年の目標を立て、それを最近まで公言してきた。

 2014年9月、米グーグルの元幹部、ニケシュ・アローラ氏に契約金約245億円も払ってソフトバンクに迎え入れたのも、自身の後継者含みだった。ところが、周知の通り、孫氏の続投意欲が高まったために、アローラ氏がしびれを切らし、わずか2年でソフトバンクを去ることになった。

 今年8月11日に60歳を迎える孫氏。今年の株主総会は風邪をひいたとのことで、議事の途中で咳き込み、水を飲む場面も度々見られたが、それでも燃えたぎる事業意欲は衰えていない様子。

「今日は風邪をひいていますが、自分にでっかい夢や志があれば病気も全然苦にならない(笑い)。毎日、朝が来るのが待ち遠しいし、休みなんて許せない。とにかくいま人生が楽しくて嬉しくてたまらないので、引退なんかしていられません」

 と目を輝かせた。宙に浮いてしまった後継者問題に対してはこう言及した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン