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津川雅彦が語る兄・長門裕之というライバル

「案の定映画が大ヒットし、チヤホヤされいい気持ちになり、兄貴との約束を忘れて日活と契約しちゃったんですね。兄貴からするとライバルを消すはずが、一番嫌な奴がライバルになっちゃった。家には毎日のように映画雑誌やグラビア誌から電話がかかってくるが、みんな兄貴じゃなくて僕宛でしたからね。兄貴もその度にカッーとしてコップを庭に投げつけたり、家中が真っ暗になってね。それで兄貴は『日活を辞めて松竹に行く』、と言い出した。

 ところが、兄貴は後輩に慕われてたから日活の連中に泣いて止められた。『大体、約束破った津川が悪いんだ、津川が辞めればいい』ということになって、兄貴に『お前が松竹へ行け』と。『別に構わないよ』って。当時は『顔さえ良ければスターになれる』と天狗になってたからね。

 だが後援会長の村上元三先生には反対された。『流行りのスターは祭りの神輿だ。観客に担がれてるんだ。神輿が勝手に足を出して歩いたら客は興ざめして、絶対に人気が落ちる。松竹に行くのはやめなさい』と。でも僕は『顔がいいから大丈夫』とばかり移籍しちゃった。結局、先生のお言葉通り、松竹では一本もヒットしませんでしたね」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

◆撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2017年6月30日号

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