「弊社は抗生物質などの薬剤の代わりに微生物を使用した生菌製剤を1995年から数年かけて開発しました。家畜用の生菌製剤はすでに存在しましたが、魚用は弊社が国内で初めて開発した。これを養殖魚の餌に混ぜると、腸内環境がよくなって臭みがなくなり、天然魚に勝るとも劣らない味になる。この実験データを宮下氏らに不正に使用されたと考えているのです」
告訴状によれば、2012年1月頃、A氏はトーワの依頼を受けて、近大水産研究所への生菌製剤の販売営業に着手した。2012年3月には、生菌製剤に興味を持った宮下氏からA氏を通じ「魚への投与の実験データやサンプルを送ってほしい」との依頼があったという。
「実験データは普段、金庫に入れて厳重に管理している企業秘密です。それでも、あの『近大マグロ』の近大水産研究所に飼料を使ってもらえるなら大きなビジネスになるし、開発の中心メンバーとしてテレビにも出演されている宮下氏なら安心できると思って提供しました。
ところが、それから何度問い合わせてもなしのつぶて。データや資料の返還にも応じてもらえませんでした。不思議に思っていたら、その後、近大水産研究所と大手水産会社・B社が生菌製剤を共同開発していることがわかったのです。B社の製品を独自で調査したところ、弊社の製品と類似点が複数あった。そのため告訴に踏み切った」(同前)
しかし被告訴人が死亡していては、告訴が受理され捜査が行なわれる可能性は低いと見られている。それでも森永氏はこう訴える。