国内

熾烈な官僚の出世レース 「失敗しないこと」が最重要事項

官僚組織の頂点が前川氏も経験した事務次官

 新聞を開けば毎日のように飛び込んでくる「事務次官」なる単語。ワイドショーをつければ「戦略特区」「岩盤規制」「レク用資料」など、コメンテーターが小難しい単語を連発しながら議論している。

 前代未聞のクーデターと称される前川喜平・文部科学省前事務次官(62才)による告発劇から1か月あまり。学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐる問題は、前川氏の出会い系バー通いに話がすり替わった矢先、当初官邸が全否定した「総理のご意向」を暗示する内部文書が発見されるなど、二転三転。騒動はいまだ着地する気配を見せない。

 だが、報道が過熱する一方で頭に「?」ばかりが浮かぶという人も少なくなかったのではないだろうか。

「要するに誰のどの行為が問題なんですか?」(32才主婦)
「前川さんの告発ってどれくらいヤバいことなの?」(43才主婦)
「そもそも事務次官って何? 政治家とどう違うの?」(45才パート)

 同様の声はネット上にも多数ある。内部文書の内容、事務次官がそれを暴露することの重大性、ひいては一連の騒動の意味するところがイマイチよくわからないのだ。今回の問題を簡潔にまとめると、加計学園の獣医学部新設を文科省が認めた際に、安倍首相による「口利き」があったのではないか、ということ。

 同学園の理事長は安倍首相とは学生時代からの「腹心の友」で、一国のトップが友人に甘い汁を吸わせた疑いが持たれている。

 5月17日、内部文書を入手した朝日新聞のスクープで明るみに出たこの一件は、同25日、文科省の元トップである前川氏が、「『総理のご意向』と記された文書は間違いなく存在する」と認めたものだから、大変。政界を揺るがす大騒動に発展した。

 前川氏はなぜこんなことをしたのか。彼の決死の告発を読み解くカギは、悲哀に満ちた「官僚の世界」そのものにある。

◆キャリア官僚の出世レースで最重要事項は「失敗しない」こと

 官僚とは、中央省庁に勤める国家公務員のこと。選挙で国民に選ばれる政治家とは異なり、大きく2種類に分けられる。国家公務員一種試験(2012年度から国家公務員総合職試験に改称)を突破した幹部候補グループと、その他の試験に合格したグループだ。

 前者はキャリアと呼ばれ、国家運営の中枢を担う重要な仕事を担当し、超特急で出世していく。キャリアを選抜する旧一種試験の受験者は、東大京大をはじめとする一流大学の学生ばかりで、倍率は10倍ともいわれる超難関。狭き門を突破した合格者は希望する省庁ごとに行われる面接試験に臨み、採用が内定する。

 国の財布を動かしたいから財務省、教育行政に携わりたいから文科省、インフラや建設を通した国づくりを求めるから国土交通省…など、目指す道は人それぞれだが、彼らには入省前から厳然たる序列社会が立ちはだかる。

 元議員秘書で官僚の実態に詳しいメディアアナリストの上杉隆氏が解説する。

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン