「大げさな機器装具は“付けている感”があり、機器に体を“動かされている”感じがしてしまう。機械への依存度を少しでも減らし、利用者の自尊心により配慮した製品作りが必要だと思いました。そして、足腰に不自由を抱える一般のかたにも幅広く利用していただけるよう、取り付けやすくて軽量な、いろいろな角度の体のひねりにも無理なく対応できるしなやかさのある製品を目指しました」
佐野教授の思いは今仙電機製作所のスタッフと共有され、試作が重ねられた。そしてこの6月、aLQが誕生し、世に出るや、大きな反響を呼ぶこととなった。
今仙電機製作所のシート・電装事業部 電装営業課の鵜飼隆主任が語る。
「家族に比べて、自分の歩行速度が遅いため、一緒の外出をなんとなく避けていた高齢のかたがお孫さんたちとためらわずに外出できるようになった、とか、スムーズに歩けるので、つまずきにくくなった、などという感謝の声をいただいたりします。健常者にとって、歩くことはふだん特別に意識しないでしょうが、足腰に不自由を感じているかたがたにとっては、歩きやすくなるということはとても大きなことなのです」
佐野教授も、利用者の声に手応えを感じるという。
「いつの間にかあきらめていたことや躊躇していたことができるようになると、人の心持ちは大きく変わります。幸せ感が連鎖するというのか、同行されたご家族の表情も一変するのです。
また、しばらく着用した翌日に外しても、人によっては付けている感じが残る、という感想もあります。アフターエフェクトといいますが、そうした感覚が自力歩行に対する自信につながることもあるのです」
その仕組みは決してハイテクなものではないかもしれない。けれど、無動力で歩行を補助する世界初の製品には、全国各地から購入予約が殺到し、海外からの問い合わせもやまないという。
※女性セブン2017年7月13日号