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橋爪大三郎氏 「日本人とフリーメイソン」の秘史をひもとく

社会学者・橋爪大三郎氏

 現代につながる友愛組織フリーメイソンは、1717年に英・ロンドンからはじまった。つまり今年はちょうど、フリーメイソン創立300年の節目にあたる年なのだ。このたび社会学者・橋爪大三郎氏がイチからフリーメイソンを学び、その成果を『フリーメイソン 秘密結社の社会学』(小学館新書)にまとめた。日本には馴染みが少ないゆえに、謀略論や都市伝説がはびこる。そんな現状を憂えた橋爪氏が、日本人とフリーメイソンの秘史を解説する。

 * * *
 日本人で最初にメイソンになったのは、西周(にし・あまね)。そして、津田真道(つだ・まみち)の二人である。

 西周も津田真道も、幕府が開いた洋学研究所「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」に勤務していた蘭学者で、1862年に幕府の命でオランダのライデン大学に留学する。受け入れ教授がメイソンで、その紹介で、二人ともフリーメイソンの参入儀礼を受けている。

 西周は、哲学、西欧思想の紹介に功績があり、津田真道は法学の面で功績があった。この二人がメイソンだったと判明したのは、1978年のこと。それまでは、初代の駐英大使・林董(はやしただす)がロンドンで1903年にメイソンとなったのが、日本人最初だと思われていた。

◆日本最初のロッジ

 幕末、開港を機に少なからぬ外国人が、日本にやってきた。彼らのなかには、メイソンもいた。

【日本グランド・ロッジの資料によれば、神戸の開発に貢献したドイツ人商人E・フィッシャー、外交官で文学者でもあった英国人W・G・アトソン、大阪造幣局長を務めた英国人T・W・キンダー、英国人ジャーナリストで「万国新聞」を創刊したJ・R・ブラック、通信技術を指導した英国人電信技師W・H・ストーン、ゲーテ座やフランス領事館などを設計したフランス陣建築家P・サルダ、英国人造船技師E・H・ハンター、アメリカ人医師S・エルドリッジなどがメイソンだったという】

 1864年、イギリス歩兵第二〇連隊が香港から横浜に移駐してきた。この隊のなかにアイルランドのグランド・ロッジ(メイソンたちの拠点をロッジという。国や州を管轄するロッジをグランド・ロッジという)の承認を受けた軍隊ロッジ「スフィンクス」があった。

 軍隊ロッジは、軍人のためのものだが、民間人も訪問・参加ができた。このロッジは、1865年、横浜に建物を借り、集会を開いている軍隊ロッジは、やがてまた移駐してしまうので、居留民のあいだに民間ロッジを開設しようという機運が高まった。

 そこで、イングランドのグランド・ロッジに申請し認可されたのが、「横浜ロッジ」である。横浜ロッジは、その後ずっと活動を続け、関東大震災で建物が破壊されると、メイソンの拠金で、横浜の山手に新しく建て直された。

 横浜のほかにも、各地の居留地に、ロッジが開設された。神戸、東京、長崎など、1885年までに8箇所にのぼっている。このうち、神戸の「ライジング・サン・ロッジ」、横浜の「ロッジ・東方の星」は、現存している。

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