芸能

記憶喪失の父役・沢村一樹 心の変化を目の動きや表情で好演

「お父ちゃん」を好演している沢村一樹

 第16週(7月17日~22日)以降、週間平均視聴率20%超えを続けているNHK連続テレビ小説『ひよっこ』。行方不明になった「お父ちゃん」が記憶喪失の状態で見つかってからは物語が大きく動きだし、有村架純(24)演じるヒロインの谷田部みね子の人生物語とともに、お父ちゃんの記憶が戻るかどうかが大きな見どころとなっている。そのお父ちゃんこと谷田部実を演じているのは沢村一樹(50)。民放ドラマでもたびたび父親役を演じてきた沢村の今回の役は、物語の途中で記憶喪失になってしまうという難しい役どころだが、ベテランの円熟味も出てきた沢村はその役をうまく演じていると評判だ。お父ちゃん役を好演している沢村の演技について、元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義さんに分析してもらった。

 * * *
 記憶喪失にも度合いがあると思いますが、沢村さんが演じる「お父ちゃん」の実(みのる)は、自分の名前も家族のことも忘れてしまっており、かなり重症であるように見受けられます。突如、自分の前に現れた家族を肯定も否定もできない戸惑い。もっと言えば、その奥底にある「恐怖」。自分の運命を自分でコントロールできないという、体験したことのない恐怖を演じないといけないので、難しい役であることは間違いありません。

 そしてこの役をさらに難しくしているのが、記憶喪失後の実が全くの別人としてではなく、元来持っている優しさを残しているという設定です。妻の美代子(木村佳乃)や娘のみね子、そして自分を保護していた女優の川本世津子(菅野美穂)の4者が初めて対面した時は、家族に対しても、川本世津子に対しても気遣いや優しさを見せていました。ここでは360度意識を張り巡らせている様子が視聴者に伝わっていないといけませんが、大きな演技はできません。目の動きや細かい表情だけでそれを伝えないといけない。この役を下手な役者さんが演じてしまうと、視聴者は作品そのものをどう見ていいかわからなくなってしまうところですが、沢村さんは繊細かつ大胆に演じていました。その後、自分の記憶にない話を美代子やみね子から聞いている時も、心の微妙な変化を表情だけで表現しています。

「沢村一樹ってこういうこともできる俳優だったのか」と正直驚きました。沢村さんというと、数多くの作品に出演してきた豊富なキャリアがありますが、私は個人的に、NHKのコメディー番組『サラリーマンNEO』の「セクスィー部長」のイメージが強烈にあるので(笑い)。

 沢村さんがこの役をうまく演じられたのは、役者としての経験もさることながら、彼のリアルヒストリーとも無関係ではないでしょう。ドラマとは事情が異なりますが、女性週刊誌の報道によれば、沢村さん自身、少年時代に実父が借金を残して家からいなくなるという体験をしていたそうです。沢村さん自身は失踪していないが、父親が突然消えてしまった家族の気持ちがわかっている。

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