国内

岐阜老人介護施設5人死傷 退職を促された元職員の人物像

介護現場が虐待を招きやすいのはなぜ?(写真/アフロ)

「飛騨の小京都」と呼ばれる風光明媚な街の老人介護施設で、不可解な事態が起きている。事件か事故か──注目されているのは死傷した5人の介護にかかわった1人の元職員。この施設でいったい何があったのか。

「“犯人”とは断定できないが、(警察捜査や報道で)Aさんの名前が挙がっていることはみんなが知っています。このまま職員でいれば入所者が不安で夜も眠れなくなるし、職員の気も休まらない。だから彼には退職してもらうことにしたんです」

 苦渋の表情でそう語るのは、高齢の入所者が短期間に5人連続で死傷した『介護老人保健施設 それいゆ』(岐阜県高山市)の折茂謙一理事長だ。

 1997年に開業した『それいゆ』では約80人の職員が働き、約90人の入所者が生活している。

「介護老人保健施設」は公的施設なので、民間の老人ホームに比べて費用が格安。ただし“終身制”ではなく、自宅で生活することを目指して医療ケアを受けたり、リハビリをする施設なので、平均入所期間は1年弱と短い。

「特養ホームなどと比べて、終末期の高齢者は多くないはずなのに、わずか2週間余りの間に3人が死亡、2人が大けがを負ったことは異様な事態です。岐阜県警は事件性があると判断して捜査を進めています」(全国紙社会部記者)

 まず7月31日、門谷富雄さん(享年80)が喉に食べ物を詰まらせて倒れ、搬送先の病院で亡くなった。

 8月6日には石本きん子さん(享年93)が部屋で倒れた状態で見つかり、翌日、搬送先の病院で死亡。施設は「自分で転倒して頭部を打って脳挫傷になった」と説明するが、遺族は「いつも前のめりに転んでいた。頭を打つのは人に押されたからではないか」と疑念を抱く。

 3人目に亡くなった中江幸子さん(享年87)は8月12日夕方、職員が病室を訪れると顔面蒼白で返事がなく、搬送先の病院で翌日死亡したが、経緯が不自然だったことから県警が16日に司法解剖。死因は、外から圧迫された肋骨が肺に刺さった「外傷性血気胸」だった。

 施設側は、「入浴介助の際、胸骨や肋骨を圧迫してヒビが入り、ベッドから車いすに移動する際にずれて肺を傷つけた可能性がある」と説明するが、親族は、12日午後に面会した際、首や胸にあざのような痕があったと指摘する。

「中江さんは昨年暮れから入所していますが、親族にとっては初めて見る痕で、『寝たきりだったので自らの力であざができたとは考えられない』と主張しています。司法解剖の結果、中江さんの胸部には、外部から押さえつけられた際にできる圧迫痕が確認されました。警察は職員による虐待の可能性もあるとみています」(前出・記者)

 15日には91才女性が中江さんと同じく肋骨骨折と外傷性血気胸で入院。その翌日には93才女性が肺挫傷で病院に搬送された。

関連記事

トピックス

留任となった茂木敏充・幹事長(時事通信フォト)
【内閣改造の内幕】茂木敏充・幹事長の留任の裏に麻生副総裁との「来年の総裁選への不出馬密約」あったか
週刊ポスト
堺雅人(時事通信フォト)
《アクマゲーム》『VIVANT』超え狙う日テレ、水面下で社運賭けて制作する「新ドラマ」の全容
NEWSポストセブン
だいたひかる、がん治療と不妊治療の命懸けの両立 がん患者に伝えたい「乳がんになっても妊娠は不可能ではない」
だいたひかる、がん治療と不妊治療の命懸けの両立 がん患者に伝えたい「乳がんになっても妊娠は不可能ではない」
女性セブン
壮絶な少年時代を送っていた姫野和樹(時事通信フォト)
【日本代表・姫野和樹】貧しかった少年時代「道具代があまりかからない」とラグビー部に入部、選手としての成功が“希望の光”に
週刊ポスト
01-01
山口真由さんが語る「自分の弱点」と「経験できなかった青春」 『スラムダンク』『白線流し』に夢中
NEWSポストセブン
西川のりお(2021年5月撮影)
「僕は与党を脅かす、野党の漫才師になりたい」芸歴50年超・西川のりおが語る「けったくそ悪い」の精神
NEWSポストセブン
天海祐希(時事通信フォト)
《延期中》映画『緊急取調室』市川猿之助の代役難航、年内の公開断念「主要キャストの年内スケジュールも取れず」
NEWSポストセブン
昨年は甲子園に出場した村田浩明監督だが…
【ブチギレ音声/「頭がおかしいんじゃねぇか!」】名門・横浜高校野球部の村田浩明監督 試合後、球児に怒号で現場騒然 ハラスメント行為かの問いに学校の見解は
週刊ポスト
羽生結弦(写真は2022年)
【全文公開】羽生結弦を射止めた「社長令嬢のバイオリニスト」実家は“安倍元首相との太いパイプ”の華麗なる一族
女性セブン
ゆたぼん
ゆたぼん「中学校に登校宣言」と「父親ブロックで“親離れ”」YouTuberとしての未来はどうなるのか
NEWSポストセブン
フジ・宮司愛海アナ(右)と常田俊太郎氏
【全文公開】フジ・宮司愛海アナ、東大卒実業家兼音楽家と育んでいた半同棲愛 本人は「うふふふ」
週刊ポスト
羽生結弦(AFP=時事)と末延さん
羽生結弦と結婚の末延麻裕子さんの関係は“憧れのプルシェンコ”にリンクする 「スケーターとバイオリニストの相性はいい」
NEWSポストセブン