そうした猫の訴求力に着目したビジネスも拡大中で、猫を起爆剤に経済を活性化させる”ネコノミクス”なる言葉も生まれた。
しかし、鉄道はたくさんの人たちが乗車し、駅も不特定多数の人が利用する。それらの人たちが必ずしも猫好きとは限らない。猫アレルギー体質の人もいるだろう。また、衛生的な問題、誰が猫を管理するのかといった責任問題なども発生する。
先の養老鉄道の例を引けば、列車内では猫や犬といった小動物はケージに入れなければならない。ねこカフェ列車は、動物愛護団体が保健所から許可を得ているために特例的に実現した企画でもある。
そうした難しい問題もある中で、近畿日本鉄道(近鉄)は奈良県の生駒ケーブル線で工夫を凝らした車両を運行している。生駒ケーブル線は、生駒山中腹にある宝山寺や山頂で営業している生駒遊園地へアクセスするための路線だ。
1999(平成11)年、生駒遊園地内に小動物と触れ合える「わんにゃんふれあいパーク」がオープンした。それに合わせて、遊園地までアクセスする生駒ケーブルでも猫型の「ミケ」と犬型の「ブル」という車両が登場。これらは、外観デザインを猫や犬に模しているだけではない。
「外観デザインに相応しいBGMを車内で流すとともに、駅に到着する際などには車外にも演出音響を流し、ホームでお待ちのお客様にも楽しんでいただけるように工夫しました(現在、駅の到着音は休止中)。また、”ブル”と”ミケ”がすれ違う時には『わんわん』、『にゃ~ん』という鳴き声であいさつ交換をします。これによって、両方の車両に乗車しているお客様が一層楽しい気分になっていただけるようになっています」(近鉄広報部)
2015(平成27)年11月に「わんにゃんふれあいパーク」は惜しまれつつも廃止されたが、生駒ケーブルでは今でも”ミケ”と”ブル”が活躍中だ。近鉄によれば、「『わんにゃんふれあいパーク』が廃止されても、”ミケ”と”ブル”の運行は続ける予定」と言う。
これまでローカル線の現象に過ぎなかった猫と鉄道のコラボレーションは、新たな局面に入りつつある。
東急電鉄の世田谷線でも、招き猫型の吊り革や床面に猫の足跡を施した特別仕様の”幸福の招き猫電車”を9月25日から運行する。
今後も鉄道と猫の関係から目が離せない。