国内

正社員のうち40% シングルマザーの気概と覚悟重視する企業

女性社員の40%がシングルマザーという岡谷市の『リバー・ゼメックス』

 子供を起こし、朝食を作り、保育園に送り届けてパートに直行。仕事が終われば子供を迎えに行き、食事、掃除、洗濯と休まる時間は一時もなし。しかも、給料は正社員の半分以下…。世のシングルマザーは、今日も過酷な世界に生きている。だが、その逞しき生命力に熱い視線を送る人々も存在する。今、企業と自治体がシングルマザーの確保に躍起になっていた。

 全身を覆う水色の作業服に身を包んだ女性社員たちが、クリーンルームの中で黙々と機械を組み立てている。製造ラインの1つでは、子供の授業参観のため1人が早退したが、すぐに別の社員がヘルプで入る。別のラインでも、体調を崩した子供の看病を理由に熟練工の1人が休んでいた。

「こんなの日常茶飯事です。みんなが助け合いの精神で働いているので、なにも問題ありません。全員が全工程をマスターしているので、空いた所には誰か別の人が入ればいいんです」

 女性社員たちがこともなげに言うこの会社は、長野県岡谷市の精密医療機器メーカー『リバー・ゼメックス』。社員数55人のうち女性が48人、うちシングルマザーが22人という“女性ファースト”の企業である。シングルマザーの占める割合は40%だ。

 特筆すべきは、22人のシングルマザーを含め、全員が「正社員」であること。3組に1組の夫婦が離婚するといわれる現代において、同社の存在が“一人親”たちの光となっている。

 現在、日本の母子家庭は約120万世帯で、その平均稼働所得(労働によって得た収入)は年間213万円。全世帯の平均収入403万円と比べると、あまりにも低い。

 働きながらも女手一つで子供を育てなければならない以上、彼女たちは時間の融通がきくパート勤務を選ばざるをえないのが理由だ。家計の問題で子供は大学進学を諦め、教育格差が就職格差に繋がり、いつまでも貧困から抜け出せない。

 この負の連鎖に抗う企業が、先述のリバー・ゼメックスだ。同社は前身の会社を含めて創業39年。内視鏡用ポリープ切除器やカテーテルなど医療機器の製造分野で成長を続け、現在は3つの工場と2つの系列会社を持つ。

 同社の創業者である西村幸会長(67才)は「採用に当たってシングルマザーばかりを選んできたつもりはない」と力を込める。

「私は履歴書をほとんど見ないんです。面接をして“この人はやる気があるな”と感じる人間を採用してきたら、結果的にシングルマザーが増えていた」

 飾り気のない口調で話す西村会長。履歴書を見ないのは、採用してもらおうと、うわべだけの美辞麗句を書き連ねる人間が多すぎるからだという。

「われわれのような中小企業にとって、紙に書かれた情報なんてどうでもいい。経歴や性別は一切関係なく、大事なのはやる気だけ。シングルマザーが女手一つで子供を育てるって、並大抵のことじゃないんです。嫌なことがあっても辞めるわけにいかないし、“なんとしても自分の手で子供を育て上げる”という気概、覚悟がある」(西村会長)

◆私が代わりに入るから授業参観に行っておいで

関連キーワード

関連記事

トピックス

『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《TOKIO・国分太一が無期限活動休止》「演者とスタッフは“独特の距離感”だった」関係者が明かす『鉄腕DASH』現場の“特殊な事情”
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン