国際情報

北朝鮮を牽制する米軍の訓練 使い古された手法で効果はない

航空自衛隊三沢基地に展示された米B1B爆撃機(写真/時事)

 国連の追加制裁に反発する形で、9月15日にも再び日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した北朝鮮。米国や日本を名指しして、執拗に軍事攻撃をチラつかせる態度をみる限り、これまで米軍を中心に行ってきた軍事訓練の数々は、本当に北朝鮮への「威嚇効果」があったのか疑問だ。朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏も“使い古された手法”と指摘する。一体どういうことなのか。

 * * *
 北朝鮮の建国記念日である9月9日、航空自衛隊のF-15戦闘機2機とグアムから飛来した米空軍のB-1B戦略爆撃機2機が東シナ海で共同訓練を行った。

 これまでにも、B-1Bが韓国上空を飛行する際に航空自衛隊および韓国空軍と共同訓練を行っているが、9月9日の訓練と同様に北朝鮮に対する「牽制」と報じられている。しかし、マスコミが報道するように、本当にすべての訓練が「牽制」になっているのだろうか。

 北朝鮮は9月3日に6度目の核実験を実施したわけだが、春から続いている米軍による「牽制」に効果があったのなら、実験には踏み切らなかっただろう。

 米空軍は空自戦闘機や韓国空軍戦闘機と編隊飛行を行うB-1Bの写真も公表している。だが、いつ、どこで撮影されたのかも分からない写真だけを見て、北朝鮮は驚き、恐怖を感じているだろうか。

◆民間機だらけの韓国の空

 北朝鮮軍はレーダーで韓国上空を飛行する航空機を監視しているため、他の軍用機とともに、B-1Bの動向も注視しているだろう。このため、北朝鮮軍にリアルタイムでB-1Bの動きを見せることが、「牽制」の大きな手段となる。

 しかし、韓国上空とその周辺は国際線・国内線の民間機が多く飛行しているため、B-1Bが民間機と同じようなルートを飛行してしまったら、北朝鮮軍のレーダーでは、どの航跡がB-1Bなのか判別できない。

 国土が狭い韓国では、軍用機が訓練を行える空域は非常に狭い。ただし、ソウルと東海岸の江陵を結んだライン以北は、民間機は飛行していない。このため、このラインと韓国と北朝鮮を隔てる非武装地帯(DMZ)の間を飛行すれば、ひとまず軍用機だということは分かる。

 もちろん、韓国周辺の洋上にも訓練空域が設定されているため、洋上を飛行することもできる。しかし、洋上にせよ陸上にせよ、レーダーで捕捉した航跡がB-1Bだと北朝鮮軍でも明確に分かるように飛行しなければならない。

◆北朝鮮軍でも分かるように飛行

 もっとも、北朝鮮軍のレーダーは古く、精度も低いため、超音速で飛行するなどB-1Bならではの「あからさまな飛行」を行う必要がある。

 例えば、北朝鮮が中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」を発射した3日後の7月7日に、非武装地帯近くの演習場に訓練用爆弾を投下したと報じられている。しかし、「牽制」とするためには非武装地帯付近や洋上を超低空で飛行してはならない。

 B-1Bの最大の特徴は、敵のレーダーに捕捉されないよう、超低空を高速で飛行する地形追随飛行ができるという事なのだが、北朝鮮を「牽制」するためには、この能力を発揮してはいけないのだ。

 つまり、陸上、洋上を問わず、北朝鮮軍の老朽化したレーダーでも捕捉可能な範囲内で飛行しなければならいため、実戦では行われないような「牽制」のための飛行を行うことになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン