芸能

『ひよっこ』元舎監と大女優の「四の字固め」はありえない

番組公式HPより

 いよいよ幕切れが近付いてきた、その段階でドラマの評価が急変するのは稀だ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
「稀有なくらい、中だるみ感が少ない朝ドラ」──『ひよっこ』について私はコラムでたしかにそう書きました。あれはまだ太陽がギラギラしていた8月の時期。その時点で、まさか9月に入ってからの展開がこうなるとは……予想しなかった。

 半年にわたるドラマの最後の「1か月」が「それまでの5か月」と、こうも質の違うものになるとは。時代設定が雑になってグダグタにたるむとは、ちょっと想定外。

 象徴的なシーンを一つ……元舎監の愛子と大女優・世津子が、あかね荘の一室で同居し、ドタバタと足を絡めて床の上にころがりプロレスごっこに興じる。いい年をした中年女性同士が、四の字固めと逆四の字固めを掛け合って、はしゃぐ。

 ありえない。

 たしかに昭和40年代、プロレス人気はありました。でも良きにつけ悪しきにつけ、あの当時は性別、年齢、職業などの出自や属性によって「振る舞い方」に違いがあり、祖父は祖父、親は親の役割を担っていた。大人は大人、都会の女優は女優としての振る舞いがあり、プライドがあり、生きる型のようなものがあったはず。

 プロレスごっこで空手チョップ、ドタバタ床をのたうち回るというのは小学生あたりの子供担当だったはず。5ヶ月かけてコツコツと描いてきた「昭和」の風景や雰囲気。それに沿った人物像を作りエピソードを積み重ねてきたのに。最後の1ヶ月でいとも簡単に手放してしまうとは……。

 そもそも『ひよっこ』は物語の軸が昭和という時代にある。

 みね子の父は家計を支えるため田舎の農家から東京へ出稼ぎに。家族のために必死に働き、厳しい環境の中で記憶喪失になり失踪。みね子は金の卵として上京し、働きながら父を探し回った。そして大女優・川本世津子と記憶を失った父が、まるで夫婦のようにして東京で暮らしているのを発見し……という、今より貧しかった時代を背景に、複雑な出会い方、衝撃的な展開を描いてきたはずです。

 女優・世津子は、いわば東京・非日常の象徴。田舎・みね子たちの日常との対比でもある。そうした重要な軸を、テキトウにあしらってしまえば描いてきた世界は壊れてしまいませんか?

 もろちん「ドラマは作り話」「フィクションを楽しめばいい」「たかが娯楽」という声もあるでしょう。しかし、娯楽とはいえ約束事は必要。そうじゃないと遊びは成り立たないし、面白くも深くもならないから。

 思いつきやご都合主義で設定をテキトーに変えてもいいなら、作品と視聴者との約束事も消えてしまいます。役作りの努力、丁寧な時代考証、田舎のロケ映像の説得力も意味がなくなります。

関連記事

トピックス

バラエティー番組『孝太郎&ちさ子 プラチナファミリー 華麗なる一家をのぞき見』
コシノ三姉妹や石原4兄弟にも密着…テレ朝『プラチナファミリー』人気背景を山田美保子さんが分析「マダム世代の大好物をワンプレートにしたかのよう」
女性セブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン