このドラマは、戦国時代にタイムスリップした大食い俊足の女子高生・唯(黒島結菜)が忠清に一目ぼれして奮闘するという物語。この若君は、味方が戦で大負けしても動じない。「若君~!!」と目にハートを浮かべて突進してくる唯を見ても、常に涼しい顔であっさり対応である。
むき出しVSあっさり。対照的な若君ふたりだが、共通している点もある。着物のセンスだ。万千代も忠清も基本は青系か白である。思い出してみれば、大河ドラマでも『軍師官兵衛』の若君黒田長政(松阪桃李)は青い陣羽織を愛用していたし、『真田丸』で中川大志が演じた豊臣家の若君秀頼も艶やかな青系が多かった。実は昭和の二枚目大川橋蔵の『新五十番勝負』など若君が主役の名画でも青や白の着物は定番なのだ。
青や白は爽やかで若々しさを表現するのにぴったり。青空や白馬とも即コーディネートOK! 赤や桃色などが多い相手役のお姫様の着物と色が被ることもなし! 万千代も忠清も伝統的な「若君カラー」を踏襲しているといえる。
とはいえ、菅田が定番カラーだけでおさまるはずはなく、家康との面談には赤のグラデーションの上下で参上。これで派手に見えないところが菅田将暉である。かつて赤い着物で颯爽と現れた若君といえば、1978年のドラマ『若さま侍捕物帳』の田村正和がいる。こちらもべらんめえ口調で怒りまくり、必殺技の独楽を駆使して悪をやっつけるという喜怒哀楽むき出し若君。物静かな田村が「おうおう」と袖をまくって怒っていた時代があったとは今では信じがたいが、40年の時を経て現れた万千代には、田村に続く個性派若君の気配がする。
菅田は、初時代劇出演。15歳の万千代らしさを出すため、ぴょこぴょこスキップのように歩く。万千代は史実でもイケメンだと記録されているらしい。戦場では長槍を振り回して大暴れし「井伊の赤鬼」と呼ばれたともいわれる。菅田は若君になっても「鬼ちゃん」なのである。「日の本一の草履番になる!」と鼻息を噴射するニュータイプ若君万千代の暴れっぷりに注目したい。