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意外? モンゴル力士たちはお坊ちゃま揃いだった

 一九八五年生まれの白鵬は、モンゴル相撲で五年連続六度の優勝をした大横綱であり、レスリングで五輪に五度出場しメキシコ五輪ではモンゴルに初のメダルをもたらした国民的英雄ジグジトゥ・ムンフバト氏を父に持つ(東京五輪での駒沢体育館を思い出として語っている)。

 医師の母はチンギス・ハーンの流れを汲む家柄。少年時代にはモンゴルの平均月収に相当する額のバスケットシューズを買い与えられていた。実家のバスタブは猫足タイプの優雅なものだったから、来日してそうでない風呂場を見て仰天したそうだ。

 同年生まれの鶴竜は金持ちと言われることに「欲しかったバスケットシューズを買ってもらえなかった」「実家は1LDKのマンション」と反論したが、父は大学教授(現在はモンゴル国立科学技術大学の学長となっている。角界入りを嘆願する手紙は父の同僚の日本語学者に訳してもらった)、母はラジオ番組制作者、姉は留学先のアメリカで就職している。十分に華やかな家庭だ。バスケットシューズにしてもナイキの大人気モデルだったのでは。

 特に育ちが良かったと聞くモンゴル人力士を挙げたが、あくまで学問的・文化的に特別な存在だったということによる豊かさだ。だからこの度の朝日龍の親は不動産で財をなした人物であるという件には、モンゴルの変化・社会主義時代にはなかった「富」のかたちを知らされた。

 日馬富士は警察の高官の息子で小学生の頃から本格的に絵を描いていた余裕のある育ちではあるが、関取昇進後に親に車やブランド時計、革のコートなどをプレゼントして喜ばせたという。今後朝日龍が親になにかをプレゼントしたとして、うれしいのは物ではなくそこに込められた愛情だろう。

 朝日龍は一九九五年生まれ。一九七四年、一九八五年、一九九五年と十年ずつ開いた三世代の少年が見たウランバートルの風景の違いを、大相撲がなければ考えることもなかった。

※週刊ポスト2017年12月15日号

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