幹事長室の壁には角栄氏の書が
ブルドーザーと呼ばれる実行力で先頭に立って政策を実現させた田中氏と権力者を支える“黒子タイプ”の二階氏の政治スタイルは対照的に見える。そのことを認めつつも二階氏は「私の原点は田中先生」と語る。
田中氏が官僚の入省年次から家族関係まで暗記し、夫人の誕生日には花を贈って搦め手から官僚を取り込んでいったのは有名だが、二階氏にも自民党国対委員長時代の2007年頃、与野党の国対関係者を驚かせたエピソードがある。
「野党の抵抗で法案審議が暗礁に乗り上げたとき、二階氏は野党のキーマンだった大幹部が可愛がっている孫の誕生日を覚えていて、その子にプレゼントを贈った。いたく感激され、法案に成立の道筋をつけた。それを臆面もなくやってのけるのが二階さんの凄味だ」(自民党ベテラン議員)
他の政治家が見よう見まねでやろうとしても、かえって反発を買うだけだろう。二階氏はどうやれば相手を傷つけずにそれができるかを田中角栄氏から学んだ。二階氏はこう語る。
「田中先生は相手を傷つけたり、迷惑をかけたりすることがないよう言葉の端々にまで極力気を使っておられた。たとえば5人を相手に話をすれば、1人くらいは学歴や仕事のことなどでコンプレックスがあって、話題によっては知らないうちに傷つけてしまうことがある。しかし、先生はそういうことを絶対に許さなかった。1人も寂しい思いをすることがないよう真剣に考えて気を配っていました」
そうした気配りは、トップダウンで指示を出すタイプの権力者が最も苦手とするところだ。二階氏は田中流の気配りを武器に権力者の信頼を得ていく。
※週刊ポスト2017年12月22日号