「誤解している人も多いのですが、サイコパスがみな犯罪に走るわけではありません。全人類の1%(約7000万人)はサイコパスだといわれており、そのほとんどは一般社会で普通に生活している。実際、企業のCEO(最高経営責任者)など、組織のトップにはサイコパス気質の人間が多い。前例なき挑戦でもリスクを恐れない、冷酷に部下を切れるなど、上に立つ人間には必要な特性でもあるからです。ケネディやクリントンなどの歴代大統領にも、顕著なサイコパス特性が見られるという指摘もある。ちなみに、理由は不明ですが、女性にサイコパスはほとんどいません」(サファリック氏)
英誌『TIME』は2014年、「サイコパスが多い職業トップ10」と題した記事を掲載しているが、1位はやはりCEO。2位以降は弁護士、報道関係者、セールスマン、外科医、ジャーナリスト、警察官と続き、いずれも心身に強いプレッシャーがかかるなか、リスクや批判を恐れずに突き進む能力が求められる職業が占めている。
白石容疑者のように、サイコパスの素養が犯罪志向に結びつくのはごく一部のケースだというが、この“ごく一部”が最大の問題だとサファリック氏は続ける。
「罪の意識が欠落し、逮捕のリスクも考慮できない。ゆえに歯止めがきかないのです。次々に殺し、次々に犯す。犠牲者には何の感情も持ちません。とりわけ殺人衝動に結びついた場合、世を戦慄させる快楽殺人者やシリアルキラー、ネクロフィリア(死体愛好者)になりやすい。
彼らは外見上ごく普通の人間で、話術に長け、市井にうまく溶け込んでいる。私のような専門家でも、サイコパスのシリアルキラーを完全に見分けることは困難です。隣人でさえ、逮捕されるまで連続殺人犯だったと気づかないケースも多い」
座間市の事件もまた、同じアパート住人で、白石容疑者の悪魔の素顔に気づく者は一人としていなかった。どこに潜んでいてもおかしくない異常犯罪者。私たちに見分ける術はないのか。そう問いかけると、サファリック氏は「答えはノーだ」と笑った。
「極めて難しいが、不可能ではない。彼らの行動を細かく分析していくと、わずかながら“兆候”が見えてくる」(サファリック氏)
※女性セブン2018年1月4・11日号