倉本ドラマでは、最新作『やすらぎの郷』にも出演している。
「大先輩ばかりの現場ですから、僕は絶対にセリフを間違えてはいけないと思って臨みました。ところが、皆さん『本当にシナリオ通りにやっているのかな』というくらい、それぞれに自分の間で、つっかえたりしながら演じている。セリフが出てこないんじゃないかと思うこともあるんですが、それがリアルに映るんですよね。僕はストレートに演じようと思ってやったのですが、ミッキー・カーチスさんとかがセリフにあるのか分からない感じでやっているのを見ると、やっぱり凄いですよね」
NHK大河ドラマをはじめ、テレビ時代劇で武将役を演じることも多く、武人としての迫力を巧みに表現してきた。
「武将ってカッコ良いだけじゃダメなんですよね。美学を持っていないと。彼らは明日をも分からない命じゃないですか。その潔さを出したいと思っています。威張っているだけではなくて、癖といいますかね。そういうところに存在感を出したい。
僕は上手い役者にはなれません。存在感の役者になりたい。そのためには、人間としてのヘソがきちんと根本にあるように役を捉えないといけないんです。
ただ、今の現場はカット割が多いんで、計算ずくめの芝居になって存在感が消されちゃうんですよね。これも時流ですし、作品は監督のものなので仕方ないのですが──」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。『週刊ポスト』での連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2018年1月12・19日号