11月に入って、鈴木は良心の呵責から日本カヌー連盟の専務理事に事実を告白。8年前から、ライバル選手たちの練習器具や競技中に使用するパドルを盗んだり、壊したりするような悪質な嫌がらせ行為を働いていた事実も打ち明けた。
結果、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は暫定的だった小松の資格停止処分を解除。一方の鈴木は8年間の資格停止処分となった。事実上の永久追放だろう。
スポーツ選手のスキャンダルは数あれど、ライバルを蹴落とすために、何かしらの愚行に及んだというのはレアケースだ。記憶する限りでは、1982年に発覚した協栄ジム・金平正紀会長(当時、故人)が、相手陣営に薬物入りのオレンジジュースを飲ませた“毒入りオレンジ事件”ぐらいではないか。
自ら申し出たとはえ、鈴木が犯した行為に同情の余地はない。
◆「家族が重圧になってしまった…」
久野氏が事件の詳細を知ったのは、鈴木が連盟に電話を入れる前夜のことだったという。「お父さん、大変なことになった」と、娘から報告を受けた。
「天と地がひっくり返ったような驚きでした。最初は信じられませんでしたが、本人に問い質すと、『間違いありません』と。私の力ではどうしようもありませんでした。時間を元に戻すことなどできませんから、やってしまったことに対してJADAや警察に報告する義務がある。しっかり責任を果たしなさいと伝えました」