そうした大盤振る舞いで一番の恩恵を受けているのは、学生よりも大学だ。政府の規制緩和で大学・学部新設が容易になり、この20年間で全国に約200校の私立大学が新設された。学生募集が難しい新設私大にとって、奨学生急増は“恵みの雨”となっている。ある地方私大顧問が語る。
「昔なら経済的理由で進学をあきらめていた学生が大学で学ぶようになった。そのおかげで地方の中規模以下の私大にも学生が集まって運営が成り立っている。もし、奨学金がなければとっくに倒産していてもおかしくない大学は多い」
学生が借金(奨学金)で学費を払い、雨後の筍のように増えた私大の経営を支えているのである。大学側にすれば、学生がいくら借金を負っても、卒業で送り出せば“関係”は終わる。しかし、奨学生にとっては大学時代が“楽な学生生活”になるのと引き換えに、就職した途端に“苦しいサラリーマン生活”が待ち受けることになる。
月12万円の有利子奨学金(最高3%の変動金利)の貸与を受ける前述のMさんの場合、4年間の貸与額は500万円を超える。利息を合わせると最大約700万円になり、月々2万円以上を20年にわたって返済しなければならない。新社会人のスタートから重荷を背負う。
そのため、大学卒業後5年以内に3か月以上の返済延滞に陥った人数は1万8190人(2015年度末時点)に達する。滞れば一括返済を迫られ、「奨学金破産」はいまや大きな社会問題となっている。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号