そうした大盤振る舞いで一番の恩恵を受けているのは、学生よりも大学だ。政府の規制緩和で大学・学部新設が容易になり、この20年間で全国に約200校の私立大学が新設された。学生募集が難しい新設私大にとって、奨学生急増は“恵みの雨”となっている。ある地方私大顧問が語る。

「昔なら経済的理由で進学をあきらめていた学生が大学で学ぶようになった。そのおかげで地方の中規模以下の私大にも学生が集まって運営が成り立っている。もし、奨学金がなければとっくに倒産していてもおかしくない大学は多い」

 学生が借金(奨学金)で学費を払い、雨後の筍のように増えた私大の経営を支えているのである。大学側にすれば、学生がいくら借金を負っても、卒業で送り出せば“関係”は終わる。しかし、奨学生にとっては大学時代が“楽な学生生活”になるのと引き換えに、就職した途端に“苦しいサラリーマン生活”が待ち受けることになる。

 月12万円の有利子奨学金(最高3%の変動金利)の貸与を受ける前述のMさんの場合、4年間の貸与額は500万円を超える。利息を合わせると最大約700万円になり、月々2万円以上を20年にわたって返済しなければならない。新社会人のスタートから重荷を背負う。

 そのため、大学卒業後5年以内に3か月以上の返済延滞に陥った人数は1万8190人(2015年度末時点)に達する。滞れば一括返済を迫られ、「奨学金破産」はいまや大きな社会問題となっている。

※週刊ポスト2018年2月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《“ショーンK復活”が話題に》リニューアルされたHP上のコンサル実績が300社→720社に倍増…本人が答えた真相「色んなことをやってます」
NEWSポストセブン
依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
通算勝利数の歴代トップ3(左から小山さん、金田さん、米田さん)
追悼・小山正明さん 金田正一さん、米田哲也さんとの「3人合わせて『1070勝』鼎談」で「投げて強い肩を作れ」と説き、「時代が変わっても野球は変わらない」と強調
NEWSポストセブン
行列に並ぶことを一時ストップさせた公式ショップ(読者提供)
《大阪・関西万博「開幕日」のトラブル》「ハイジはそんなこと望んでいない!」大人気「スイス館」の前で起きた“行列崩壊”の一部始終
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン