国内

「優生保護法」で強制的に不妊手術を施された女性の絶望の日々

国を相手に前例なき訴訟が

「憲法13条が保障する意思決定の自由。人として最も重要なこの権利を国が侵害していたという事実に、目を背けないでほしいんです」

 宮城県仙台市の法律事務所で本誌・女性セブンの取材にこう語るのは、藤間環弁護士。1月30日、藤間弁護士を含む15人の弁護団は、国を相手に前例なき訴訟を行った。原告女性は同県在住の60代のAさん。知的障害を持つ彼女は50年ほど前、国によって強制的に不妊手術を施され、子供を産めない体にされていた。

 心身に多大な苦痛を負ったAさんはその後、国から謝罪や賠償を受けることなく、絶望の年月を過ごしてきた。“けじめ”を国に求めて立ち上がった彼女の半生が、日本の闇をあぶり出している。

 戦後ほどなくして宮城県に生まれたAさんは1才の時、口蓋裂の手術で使用した麻酔が原因とされる脳障害を負った。言葉は交わせるが、複雑な会話は苦手で、幼少期から苦労したと言うAさん。悪夢は15才の時に突然やってきた。

「『遺伝性精神薄弱』を理由に、本人の同意もないまま、公立病院で卵管を縛る不妊手術を受けさせられたのです。宮城県が公開した記録に、その事実がはっきりと記載されていました。遺伝性といわれても、Aさんの親族に障害を持つ人はいないし、そもそも障害があろうとなかろうと、不妊手術を強制するなど言語道断です。当時、本人は何をされたのかさえ理解していなかったと言います」(藤間弁護士)

 現代社会では考えられない非道行為。だが、当時の日本は法律がそれを認めていた。1948年に施行された「優生保護法」の存在だ。強制不妊の歴史に詳しい立命館大学生存学研究センター客員研究員の利光惠子さんが語る。

「『優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する』という名目で、重大な障害のある人たちの生殖、出産能力を取り除くという恐ろしい法律でした。“障害者が子供を産んでも育てられないし、受け入れる社会も大変”という差別と偏見の果てに生まれた発想です。遺伝性ではない精神疾患患者でさえターゲットにされました。歴史的に、“精神疾患は家族に原因がある”という誤った偏見があり、国もそれを真に受けていたのです」

 優生保護法の背景にあるのは、終戦直後の爆発的なベビーブームだった。食糧難で人口抑制が急務となり、障害を持って生まれてくる可能性のある子供は、「社会的負担が大きい存在」として、事前に排除することになったのだ。

 優生保護法は、建前上「本人の同意」が必要とされたが、国はこの法律に“例外”を用意していた。

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン