国内

「高等教育の無償化」が救うのは学生でなく倒産危機の大学

誰がための政策か(時事通信フォト)

 安倍政権が打ち出した「高等教育無償化」は、“奨学金を借りる学生を減らす政策”に見える。だが、本当にそうか──。

 過当競争で私大の4割が定員割れを起こしているのに加えて、今年から18歳人口が急激に減少に向かい、奨学生が払う学費では大学経営が維持できなくなってくる。安倍政権の掲げる「大学無償化」からは、“奨学金でこれ以上、大学生を増やせないのなら、授業料を国が払って18歳全員が大学に行けるようにしよう。そうすれば大学は生き残れる”という発想が透けて見える。元文部科学省審議官の寺脇研・京都造形芸術大学教授が指摘する。

「無償化がすべての大学を対象にするなら、三流大学は大喜びですよ。タダなら大学行こうとみんな入学してくれる。例えば総理の友人が経営する加計学園グループは岡山理科大学以外は定員割れ。そうした大学の救済措置と言われても仕方がない」

 日本学生支援機構のデータから加計グループ3大学の奨学金受給率を見ると、岡山理科大(50.7%)、倉敷芸術科学大(57.0%)、千葉科学大(51.7%)と奨学生によって経営を支えられていることがわかる。その中でも安倍側近の萩生田光一・自民党幹事長代行が客員教授を務めていた千葉科学大の奨学金延滞率は2.1%と全大学平均(1.3%)より高い。

 安倍政権の大学無償化の最大の問題は、大学の生き残りが優先され、「大学生に国が投資し、国に利益が還元されるか」という重要な視点が抜けていることだ。卒業生に借りた奨学金を返済するための「生活力」を持たせられない大学の授業料を無償化して学生を通わせても、国は税金投入に見合うリターンを得ることができるはずがない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン