一方で、「まずはドリップコーヒーから始めて、今年度以降、オフィスへのコーヒーサービスをスタートし、オフィス市場でも拡大していく」(浅尾氏)というタニタの法人需要狙いも理解でき、女性を中心とした健康志向の会社員には一定層、需要がありそうだが、こちらにもライバルは数多い。
その筆頭が、「ネスカフェアンバサダー」で知られるネスレ日本。同社はすでに缶コーヒー市場からは撤退しているが、1杯あたりの価格の安さもあって、オフィス向けではここ数年攻勢をかけてきた。もちろん、前述した飲料専業メーカー各社も、自販機での販売がジリ貧を辿る中、新たな販路としてオフィス需要拡大は虎視眈々と狙っている。
その中で、クロロゲン酸を武器にしたタニタのコーヒーがオフィス需要で戦っていくのは簡単なことではない。そもそも、コーヒーは原価から見て“儲かる商材”と言われてきた。だからこそ、スケールメリットを武器にコンビニコーヒーが勢力を拡大し、その量を武器に取引メーカーにもコストセーブの協力を要請でき、価格を据え置くことを可能にしている。
健康機器メーカーから食のソリューションに歩を進めてきたタニタとしては、タニタカフェがタニタ食堂の停滞感を補う期待の新業態ではあるのだが、同社が掲げるコーヒーにおける健康軸は、これまでに触れたさまざまな企業も、味を損なうことなく攻めてくる分野だといえる。そこでタニタがどう戦って結果を出していくのか、しばらく注視したい。
●文/河野圭祐(『月刊BOSS』編集委員)