それより遡ること1年以上前。フランス人のハーフで色白美人の友達・ユキに彼氏ができた。彼氏のトオルは、ピースの又吉のような物静かな感じである。地方の資産家の子息であり、都内の有名私立大学に入って上京した。彼は上京にあわせて、親から自由が丘に一軒家を建ててもらった。マンションではなく、一軒家での1人暮らしデビューである。そんなボンボンとユキは交際を始めた。
トオルはユキに、記念日のたびに、仕送りを使ってMiuMiuのバッグ、シャネルの財布、マノロブラニクの靴に、カルティエの時計をプレゼントした。ユキは男性からプレゼントをもらい慣れていたし素直に喜んで身につけた。しかし、2人は交際1年あまりで、ユキから別れを告げた。理由は、ユキが大学の先輩と浮気して、先輩を選んだからである。
トオルは気が動転し、親に「大学をやめて家に帰る」と騒いだ。トオルの父親はユキにキレた。
「よくも息子を騙してくれたな! だから東京の女は怖いんだ! 金目当てだろう! 美人だからって!」
それからトオルは「俺のことを好きになる女はみんな財産目当てだ」と卑屈になっているらしい。ユキとしてはお金に目が眩んで付き合ったわけでも、プレゼントを欲しがったわけでもないのに。
喪黒福造を前に、そんな話を思い出し笑いが止まらなかったのである。「どうせ財産目当てでしょ」は、お金を持っているだけの卑屈男の決まり切った言葉だ。だが、港区女子にとっては、ハイスペックであることなど“前提”でしかない。逆に、お金を持っていることを自慢されても、そんな話も聞き飽きている。ハイスペックで魅力的な男でなければ、仲良くもなりたくない。そんなにお金を持っているなら、卑屈を直して女子と楽しくトークできる話術を身につけるためのセミナーにでも通えばいいのだ。