演じた葵わかなさんは19歳、ピチピチの若さでドラマ開始から半年間、若さを堅持しました。50代のてんは、つるつる張ったお肌にシワ一本無いおでこ。世の中年女性が必死に消そうとしている、ほうれい線も見えない実に斬新な演出。

 てんと息子の隼也(成田凌)が、どうしても兄姉か夫婦にしか見えず混乱しました。最終週でもてんのことをチンピラが「ネエサン」と呼んでましたし。年齢を重ねる演出をどうしても回避したかったもよう。てんがアップになるたび「若っ……」と気が散ってしまい、なかなかドラマ世界に入りこむことができなかったのは不器用な私だけでしょうか。

 今どき、シワやシミ、たるみはメイクでいかようにも作ることができるはず。だとすれば、ゆで卵のまま人生後半まで突入する、という演出は何か明確な方針があってのことに違いない。

 想像しうるのは……アイドル的存在だから老けさせたくないという事務所からの強い要望か。あるいは出演中のCMとのかねあいか。演出陣の判断か。それともNHK大阪放送局自身の方針か。事情はよくわかりませんが、少なくともNHK大阪制作の『カーネーション』や『あさが来た』では俳優陣の年齢について違和感を感じなかったから、今回のドラマゆえの特殊事情かと推測します。

 たかが年齢、かもしれません。

 しかし、フィクションの世界には「暗黙の約束事」というものがあります。それが観客と役者をつなぐ架け橋となって、フィクションの世界を成り立たせていきます。

 たとえば…舞台『女の一生』で高齢の杉村春子さんが16歳の少女の役作りをしていたのは有名な話。もちろん杉村さんが高齢であることは客席のみんなが知っています。しかしこのシーンでは「少女である」ということを前提とし、客もそれを了解して物語世界に入りこんでいく。というのが観客と演技者との間に成り立つ「暗黙の約束」です。そのために役者も丁寧に役作りをするのです。

 しかし、今回の朝ドラ主人公の演出は、そうした「視聴者との暗黙の約束」を見事に覆してくれた点で新しく、また驚かされました。NHK制作統括・後藤高久プロデューサーは葵さんについて「よくあそこまで、てんを演じきったなと思いますし、しかもわずか18、19歳の女の子が。本当に頑張ったと思います」(「まんたんウェブ」2018年 3月21日)と絶賛しています。が、視聴側としてはいったいなぜ葵さんを徹底的に「老けさせない」ことにしたのか、その狙いについて興味津々、ぜひ理由を聞いてみたいのです。

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