芸能

高橋一生と松坂桃李 『わろてんか』で気力の抜けた姿を見せた

番組公式HPより

 演技力、芝居の幅という意味で考えた場合、「いつでも全力投球」が必ずしも正解とは限らないだろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラについて指摘する。

 * * *
 半年間続いたNHK連続テレビ小説『わろてんか』も本日いよいよ幕を閉じました。

 葵わかなさんが演じた主人公・てんは日本初の女興行師。「どんなにつらい時も笑いで乗り越えていく」「笑いの神様がいるから大丈夫」とお笑いビジネスを切り盛りしていく一代記。吉本興業の吉本せいがモデルでした。

 ほぼ全回『わろてんか』を見続けてきた視聴者の一人として、まずお礼を言いたい。今をときめく高橋一生さんと松坂桃李さんの、見たこともない姿を見せてくれたから。これまでで最も気力の抜けた姿を。人気絶頂の男優二人の新たな一面を発見する、まさしく希有な機会となりました。

 高橋さんと言えば、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年フジ系)で凄く意地悪で虚言癖のある佐引穣次の役を、『カルテット』(2017年TBS系)では実に風変わりな家森諭高役を、そして『おんな城主 直虎』(2017年NHK大河ドラマ)では小野但馬守政次の一途ぶりを描き出し、どんな難しい役柄にも成りきっていく集中力と迫力に視聴者の心は揺さぶられ引き込まれてきました。だからこそ超の付く人気者となったのでしょう。

 でも、今回はどことなく様子が違っていたようです。脱力感なのか生煮え感か。高橋さんが演じた実業家・伊能栞から、いつもの迫力や集中力が伝わってこない。プロの俳優として引き受けた仕事を淡々と「対処」していく雰囲気、と言えばいいのか。現実を生き抜いていくために時には「こなす」術も必要。という意味での大人な面、人間味すら感じてしまいました。高橋さんの新たな面を発見させてくれたこの朝ドラに感謝です。

 一方、『ゆとりですがなにか』(2016年 日本テレビ系)で情けない童貞小学校教諭・山路に成りきった松坂さんは、舞台版『娼年』(2016年)では延々とセックスをする男娼・リョウの役を演じて大反響を呼び映画版へ。過激なシーンが盛り込まれたR18指定の映画『娼年』はいよいよ来週公開というタイミング。素朴派からハードコアまで挑戦的に演じる、今まさに脂の乗った役者に違いありません。

 では、この朝ドラの中での松坂さんはどうだったでしょう? 

 松坂さんの役はてんの夫・藤吉。早々に逝去したけれど、てんが鈴を鳴らすたびに幽霊として登場。活き活きとしたいつもの目力はすっかり消えて焦点定まらず。魂が抜けたモノトーンの演技も幽霊だから当然なのか……。これまで松坂さんが見せていなかった脱色系の「芸幅」を目撃した気がします。それもこのドラマのおかげ。ありがとう。

 と、人気俳優二人の「新たな面」を見ることができた朝ドラ。その二人に惚れられるオイシイ役が主人公・てん。

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン