佐藤:私は3.11から譲位までのプロセスが「8月15日」にあたると考えているんです。つまり日本の危機に天皇が登場する物語だ、と。
では「お言葉」が発せられた2016年の危機とは何か。それは日本の「分断」です。政治は右と左が対立し、社会では格差が広がった。
片山:危機が迫ると普通の人間は何かができるという自信が揺らぎ、超越者を求めはじめる。現在の世界情勢は、一寸先はどうなるか分からない。全世界で独裁的国家が増えているのも無関係ではないでしょう。
●さとう・まさる/1960年生まれ。元外交官、作家。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。国際情報局分析第一課などで活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年に執行猶予付き有罪判決。近著に『十五の夏』など。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。思想史研究者。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。専攻は近代政治思想史、政治文化論。近著に『「五箇条の誓文」で解く日本史』など。
※週刊ポスト2018年5月4・11日号