謝罪会見の仕方にもいくつか種類がある。ベッキーの謝罪会見や不倫疑惑で会見をした山尾志桜里議員の時のように、会見する側が前に立ち、一方的に話すだけで質問を受け付けない会見では、会見する側と報道陣との間には一定の距離が置かれている。ダブル不倫で会見した斉藤由紀さんは声かけ会見だった。レポーターは質問するものの1人1問、声かけでというスタイルで、前に立つ斉藤さんと報道陣との間は数メートル離れていた。
謝罪会見では、会見者と報道陣との間の距離がどの程度あるかで、会見者に与える心理的圧迫感が大きく違ってくる。誰にでも他人に入り込まれたくない心理的な距離、いわゆるパーソナルスペースがあるが、囲み会見ではこのスペースに報道陣が入り込んでくる。満員電車のような状態を思い浮かべてもらうとわかりやすいだろう。そのため報道陣が近づけは近づくほど、会見者のストレスは高まり緊張が増すのである。
質疑応答が進むにつれ、最初はラインに沿って立っていたはずの報道陣が、少しずつ彼ににじり寄り、マイクを向けて質問をぶつけていく。囲み会見では、答え終わるのを待たずに同時にいくつもの質問が飛び交うため、距離的にも心理的にも追いつめられやすい。山口さんも、後悔や罪悪感がますます強まっていったのだろう。その顔はどんどん蒼白になり、声を詰まらせ鼻をぐずらせ、鼻にも額にも大粒の汗が浮いていた。
それでもこの会見では、彼の後ろに矢田弁護士が立っていた。人が最も無防備になるのは後方、背後である。質問を仕切ったり、答える彼にアドバイスするために彼の後ろに立ったのだろうが、矢田弁護士が後ろに立って会見を見守ってくれているというのは、彼にとって心理的に大きな意味があったのではないだろうか。
囲み会見は、謝罪する側にとってかなり厳しい状況に置かれるものである。今回は、こういう厳しさこそが、彼のために必要だと判断されたのだろう。無期限の謹慎処分中、お酒に逃げることなく、厳しく自分と向きあってもらいたい。